朝起きて水を一杯飲もうとキッチンに行くと、まだ寝起きの俺を呆れたような目で見つめてくる、


「……ソンギュ?」


思わず目をぱちくりさせる。
いや、だって、これは可笑しい。


「…え、…え…?」


まさか、そんな訳は…。
そう思いつつも、ソンギュから目を逸らすことが出来ない。

朝から俺を困惑させている当の本人はというと、涼しげな顔でガラスコップの淵でふんぞり返っている。

そう、コップの淵で。


「おい、ウヒョナ」

「うわっ喋った!」

「……」


生きてるの?!え、ホンモノなの?!と1人テンパる俺を荒んだ目で見上げているソンギュ。

うん、いつものソンギュだ。


「…あの、ソンギュさん」

「コップのソン子さんだ」

「、は?」


今度は何とも間抜けた声が出た。
というか何なのだ、コップのソン子さんって。

本当、ソンギュに一体何があったと言うのだ。
彼は普段滅多に冗談なんて言わないのに。

…まあ、コップの淵に腰かけて踏ん反り返っていられる程のサイズになってしまっている時点で大いにふざけているけれど。


「こ、コップのソン子さん…?」

「なに?」

「いや、なにって…。えーと、そこで何してるの?」

「ふんぞり返ってる」

「あ、そう…」


やっぱり可笑しい。
これはソンギュじゃない。うん、絶対に違う。

現実逃避したいわけじゃな…いや、もう考えるのはよそう。
とにかく今は、“これ”をどうするか、だ。


「ソン子さん、」

「あ?」

「…っていうか“ソン子”って、ソンジョンでもソンヨルでも“ソン子”になるよね」

「……」


あ、ちょっと傷ついた顔した。
かわいい。

って、そうじゃなくて。


「で、ソン子さんの目的っていうか役割っていうか、平たく言うと何がしたいの?って話なんですけど、」

「だから、コップのソン子」

「いやそれ答えになってねぇし」


思わずツッコミを入れてしまった。
俺、いつもはボケ担当なのに…。


「えーっと、つまり?簡単に言うと?」

「…コップの…ソン子……」

「うん、わかった。コップの妖精さんね」

「ちがう!ソン子だ!」

「はいはい」


もう何でもいいや。
正直ちょっと疲れて来たし、手乗りサイズのソンギュ可愛いし。

諦めモードというか、どうでもいいやモードに入ったところで本来の目的を思い出した。
そういえば俺、キッチンに水を飲みに来たのだった。

相変わらずソンギュが踏ん反り返っているコップを掴んで、流し台に持っていく。
俺を不思議そうに見上げてくる視線を無視しながらコップに水を灌ぐと、ついにソンギュが慌て始めた。


「?!お、おまえ、飲むのか?!水を?!」

「うん」

「今?!」

「うん」


適当に答えながら、手にしたコップを口元に近づけ傾ける。
すると両腕だけで体を支えていたソンギュが、うわっ!と叫び声をあげて水没した。


「わああ!ちょっやめろ!ウヒョナ!!」

「ん〜」


そのまま容赦なく水を飲み下してゆくと、コップの中でバシャバシャと暴れていたソンギュが口元に近づいて来た。


「やめろってばあぁぁぁ…!!」

「ん、」


あ、キスしちゃった。

なんだか不思議な気分だなぁと思いながら口を離すと、すとん、とコップの底に落下したソンギュ。
心なしか、ぐったりしている。


「んじゃ、俺二度寝するね」

「?!」

「おやすみ、ソン子さん」

「待てよ!助けろ!こっから出せって!!」


ウヒョナのばかあぁぁ!という悲しい声を聞きながら、俺は再びベッドへ向かった。

今度目覚めた時には、いつも通りのソンギュが居てくれますように。


コップのソン子さんを見て、事務制服姿のソンギュもいいなぁ、なんて思ったのは本人には秘密だ。









コッ○のフチ子さん(ver.ふんぞりフチ○さん)パロ。←隠す気ゼロ
ほんの出来心で…すみませんでした…。笑













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