「ヒョン、ヒョン…」


ゆさゆさ、ゆさゆさ。
低い聞き慣れた声に体を揺さぶられて、沈んでいた意識がゆっくりと浮上していく。

ぱち、と目を開けると、いつの間に潜り込んだのか、セフンがなんだか情けない顔でこちらを覗きこんでいた。


「ん…せふな、おはよ…」

「まだ朝じゃないよ、ヒョン」

「うぅ…」


ふあぁ、と大きく欠伸をして、眉を垂れ下げている弟の頭をぽんぽんと撫でる。
セフン越しに窓の外を見れば、なるほど、まだ外は真っ暗だった。


「どした、せふな」


怖い夢でも見た?

そう問えば、ちょっぴりムスっとした顔で、ちがう、とぶっきら棒な返事が返ってくる。
どこのマンネもそうらしいけれど、うちのセフンも例外なく子ども扱いされることを嫌がる。

僕としてはセフンを子ども扱いしているつもりなど無いのだけれど、甘やかされることが思春期の彼にとっては癪なのだろう。
…まあ、それも無意識だから何とも仕様がないのだけれど。


「ヒョン。ねぇ、ヒョン、」

「ん?」

「、 」


ぽつり、呟かれた言葉は、甘さとか苦さとか、そんなものは一切含まれていなくて。
それはひどく重く、息の詰まりそうな程必死に紡がれたもののようだった。

ぽつり、ぽつり。
言葉を選びながら話し始めるセフン。

そんな彼の頭をゆっくりと撫でながら、僕は静かに頷いていた。


「…ぼく、こわいんだ」


何が、とか、そんなものも、よくわかんないんだけど。
なんだか、こわいんだ。

ぎゅ、と眉根を寄せて辛そうに顔を歪めるセフンの、僕よりずっと背も高くて、肩幅も筋肉もある男らしい体を抱き寄せる。


「ひょん…」

「うん、」

「…ひょん、だいすきです」

「うん、」


僕も好きだよ、セフナ。

優しく赤子を抱く母親のように。
そっと、そっと、彼の名をささやく。


「ひょん、オンマみたい…」

「ふふ。なんだよ、それ」


すりすりと、まるで本物の赤子のように額を押し付けてくるセフンにくすりと笑う。

大きな赤ちゃんだなぁ、なんて思いながら。
腕の中の温度を決して離してしまわぬように、ぎゅうときつく抱きしめた。




おやすみ、可愛いひと

(きっと、泣いたぶんだけ笑顔がまっているはずだから)








マンネは強い子だけど、時々こうやって弱くなっちゃった時にはスホさんにすがり付いて泣けばいいなぁ、と…思って……。
たぶんカイくんも同じようなことしてると思います。
あ、彼はディオママかな。笑














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