「なんで好きだって言わないの?」


なんで、言ってくれないの?

聞こえた声に、後ろを振り返る。
そこにはいつもと変わりないチャニョルが立っていて、でもその瞳が強く俺を捕える。
離さない。そう言われているようで、俺は怖くて俯いた。


「ベッキョナ、」


やだ。いやだよ、チャニョル。
その声で俺を呼ばないで。

怖くて、悲しくて、寂しくて。
俺はぐっと下唇を噛む。
そうすることで、溢れそうな想いを閉じ込めた。


「ベッキョナ、俺を見て」


そんなの、出来るわけ、ないのに。
いつもチャニョルは、俺を真っ直ぐに見つめてこう言うんだ。

そうやって、俺を困らせるんだ。


「俺は、好きだよ。ベッキョンのこと」


ベッキョンは、違うの?

空気が、震えた気がした。
きっとチャニョルが笑ったのだと思う。
寂しげに瞳をゆらゆらと揺らせて、俯く俺に。

それでも俺は答えない。
言ってしまったら、もう後には戻れないから。


「おれは、……」

「…言って、ベッキョナ」


始まってしまえば、いつか終わりが来る。

怖いんだ。
幸せな時間が、過去のものになってしまうことが。
チャニョルが、俺から離れて行ってしまうことが。

こわいんだ。


「ベク、」


優しい声。
俺の耳を震わす、低くて落ち着いた、チャニョルの声。

もっと聞きたい。
もっとチャニョルを見ていたい。

そう思ったら、もうどうしようもなくて。
ずっと溢れそうだった想いが、とうとう零れ落ちた。


「…すき」


顔を上げて。
でもやっぱりチャニョルのことは見れなくて、また視線を下に落とす。

怖いような、悲しいような、寂しいような。
ぐちゃぐちゃに混ざった感情が俺を支配した。


「…聞こえない」


ゆらゆら、ゆらゆら。
俺とチャニョルを包む空気が不安定に揺れる。

それが酷く心地悪くて、でも気付いていないフリをして、チャニョルの瞳を見つめた。


「好きだよ」


チャニョルに負けないくらい強い瞳でそう告げる。
震える体は、きっともう彼にはバレているから。

だけどそんな俺に、チャニョルはふわりと笑って見せた。


「俺も、好き」


ベッキョナが、すっげー好き。

なんて、愛おしそうに言うものだから。
俺はつい、目を潤ませてしまって。
それを隠すように微笑んで見せると、すっ、と伸びてきた長い腕に引かれて、大きな胸の中に閉じ込められた。


「ベク、好き」

「…うん、」

「だーいすき」

「…うん」


あったかいね、ちゃにょる。

そう呟いて、溢れ出したものを広くて温かい胸にうずめた。


いつかきっと、この温もりは俺から離れていくのだろう。
始まりがある限り、終わりは必ずやって来る。

だからせめて、今だけは。




終焉のその日まで

(しあわせでいさせて、)








わちゃわちゃしているチャンベクが好きなのに、何故こうもシリアスになるのか…。
次こそ喧しいチャンベク書きたいですpq















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