001.約束

※現パロ転生話。





約束なんて意味が無い。それは守られるから約束に成り得るのであって、破棄されてしまえば空虚に消える言霊。そんなものに縋って生きるなんて馬鹿馬鹿しいし、何より疲れるのだ。
なのに、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。


「もー陛下はなんで出した書類を片付けてくれないワケ!?」
俺はアンタのお世話係じゃねーんだよ、と心底忌々しげに呟くと、当の本人はただくすくすと笑うばかりであった。入れたてのインスタントコーヒーを音を立ててデスクに置く。まったく、いつからこんな風になってしまったんだろう。前は仕事に対して誠実で、誠実過ぎて仕事が恋人かと思われるくらいだったのに。
「君が片付けてくれるからかな」
「なるほど。じゃあ出ていきましょうかね」
「駄目だよ」
薄いコーヒーを啜りながら奴はまた笑った。
「もう置いていかないって約束したじゃないか」

ごめんね陛下、陛下、待ってて、お願い、帰るから、必ず帰るから。
待ってて。

「君との最期の約束は守ったよ」
だから君も守ってよ。
そう言う奴の手にマグカップは無くて、口に弾むような笑みも無くて、俺は黙ってその唇を塞いだ。
約束なんて意味が無い。残るのは誓いだけ。

(2013.02.10)


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