7月21日

※0721の日の話。よってR18。背後に気をつけて。





エドガーは、溜まりに溜まった残業をこなし、深夜の廊下を歩いていた。
昼間、二週間ぶりにセッツァーがフィガロにやってきた。本当は夜は一緒に過ごしたかったし本音を言えば会ってすぐにでも抱き締めたかったけれど、仕事の山がそれを許してはくれなかった。サボっていたわけではない。丁度、忙しい時期だったのである。それをわかってかセッツァーは、はいはいがんばってね俺はのんびり休暇に勤しむわ、と大きな伸びをしながら自分の部屋に入っていった。

セッツァー用に割り当てた客室は、スイートになっている。案の定鍵が掛かっていたけれど、国王権限で持つ合鍵を使った。悪用する気はないのだ。夜這いではない。ただちょっと、寝顔を見て、明日も頑張りたいと思う、そんな可愛らしい我が儘だった。
夜も更けている。元々セッツァーは昼も夜も無いような生活をしていたが、今日はどうやら太陽とともに活動しているらしい。鍵が掛かっていたということはすなわち、もう就寝しているということだろう。足音を忍ばせ、リビングを抜けて寝室のドアに手を掛けると、上擦った声が聞こえた。
セッツァーの声だ。
思わず息を詰める。一体どういうことだろう。震える指でそうっとドアノブを回す。
「あ、あ、あ、あぁ、」
ベッドの上で、セッツァーが身体をくねらせていた。ローションの潰れる粘着質な音がぐちゅぐちゅと響く。高く上げられた尻を深々と玩具で穿ち、引き抜く。穿ち、引き抜く。彼の身体の中で濡らされた無機質な其れが、微弱な月明かりを受け、てらてらと光っている。
「あ、んぁ、はっ、あ!エド、エド…っ」
「……!」
切なげに額をシーツに擦り付けながら彼が呼んでいるのは己の名であった。エドガーはごくりと唾を呑み込んで、その姿を見つめる。
「エド…、エドガーっ、あ、あ、やっ、あぅぅ…」
こんな声、出すんだ…。正直、びっくりした。セッツァーがこんなふうに声を上げて乱れる様を、エドガーは実は見たことがなかった。彼はいつも唇をきつく結んで、堪えるように秘めやかな吐息を漏らすだけのことが多い。こんなふうに、艶帯びた声で啼いているところは、見たことがない。
彼を貫く玩具に、妬けた。
「は、はぁ、んっ、んぁ、あッ、」
快楽を追って、セッツァーの手の動きが速くなる。くちゅりくちゅりと高い水の音がしている。上擦った声がひたすら喘ぎとともにエドガーの名を零す。びくりと大きく身体が跳ねた。
「んっ、んぅ、んんんん…ッ!」
極めたのか、くたり、とセッツァーの身体から力が抜けた。高く上げられたままの腰がぱたんと倒れ、はあはあと肩で息をしている。
ぎぃ、と思ったよりも大きく扉の音が響いた。
セッツァーが虚ろだった瞳に驚愕の色を示す。
「…え、エドガー!?」
「今晩は」
「なんでここに…!」
「少しでもいいから君の顔が見たくて」
静かなエドガーの声に、空気の塊を飲み込まざるを得なかった。
「随分と気持ち良さそうだったね」
「……ッ」
セッツァーは真っ赤な顔で唇を噛み締めた。相当恥ずかしいのか、涙目のままふるふると震えている。
「私としてる時はあんな声上げないのに」
つい棘のある言い方になってしまったのは否めない。エドガーは憔悴していた。頭の中がぐらぐらと揺れている。
「一人ですんのは別の話だろ…」
「一人でするのにここまで使って?」
「おっ、俺の性癖にまでケチつけないでくんない!?」
セッツァーがぎうとシーツを握り締めた。ああ、言いたくないだろうことを言わせてしまったと、エドガーに苦い思いが広がった。彼が受け入れることで快感を得る身体なのは、その生い立ちに縛られたものであると、知っていたにもかかわらず。
それでも、駄目だった。自分には彼を満足させる力が無いと、思い知らされたようだった。
「あんなに玩具で感じられるなら、もう私は要らないね…?」
「だから!それとこれとは話が違うだろ!」
「何が違うっていうの」
「わかんねえならお前に古今東西大小様々のオナホを贈りつけてやる!好きなの使え!」
「え、別に、要らないんだけど…」
「てめえの言ってることはそーゆーことだよ!!」
「セッツァー声大きい!深夜だから!ちょっとトーン落として!」
呼気荒く叫ぶセッツァーに、どうどうとエドガーは両手でポージングする。
「確かにお前は遅漏だし絶倫だしデカくて苦しいしねちっこくて意地悪いし」
「うわ、なんかちょっと傷つくんだけど…」
「それでも俺はお前と寝てんじゃん!」
「そっ、そんな妥協みたいに言われても全然慰めにならない!」
「はああああ?!お前は馬鹿か!ちげえし!好き好んで嫌々足開くほど俺はそこまでお人好しでも酔狂でもねえよ!」
セッツァーは、一瞬、言い淀んで、しかし覚悟したように掠れた声で言い捨てた。
「お前に抱かれたいからに決まってんだろ…っ」
「だ、だって…!」
エドガーに、セッツァーは噛み付くように唇をぶつけた。
「抱けよ」
「……っ」
「エドガー、俺を抱けよ。俺がどんなにお前を求めてるか、身体でわからせてやる」
挑むような、しかし泣き出す寸前の苦しそうな表情でセッツァーが言う。エドガーの返答も待たずに腰に抱きつき、震える指でフロントを寛げ、彼の分身に舌を這わせた。
「セツ…っ!」

(2014.07.21)
続きません…


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