コンフェッティロマンス

エドガーは落ち着かなかった。
ただ座っていることも出来ず、うろうろと自室を行ったり来たりしている。時計の針の音がやけに大きく聞こえる。午後十一時。

双子の弟は今年はモブリズで過ごしている。今日の生誕祭は一国の主のものとしては比較的しめやかに執り行われ(もっとも、エドガーは華美極まるものを好まない)、年に一度の国務を終えた彼は重いマントを脱ぎ捨てて一服をしていた。

「セッツァー様、来ませんねぇ…」
エドガーが王位に就いてから傍に仕え、その殆どを知る侍女のひとりは、彼好みの紅茶を淹れつつ溜め息を吐いた。

「君も聞いていないのかい?」
「陛下ですらお聞きでないのに、私がお尋ねできませんわ」
「彼も君たちになら話すと思ったのだが」

やはり風の行方はわからないのかな。エドガーは悪戯な笑みを浮かべたが、内心は不安でいっぱいだった。まさか来ない気でいるんじゃないだろうか。いや、いくら彼でもそんなことは。
国王であるエドガーの誕生日が忙しいことなど、数年エドガーと共に過ごしているセッツァーは重々承知しているのだ。だから敢えてこの日は外して城に居ない。エドガーは時々、そうした彼の聡明さを残念に思う。

例年ならば式典が終わった頃を見計らって城にやってくる彼だが、今日は一向に気配が無い。もう既に柱時計が十一時を告げてしまった。エドガーはそわそわしたまま自室に引き蘢っている。早くしないと日付が変わってしまう。間に合わなかったらどうしてやろうか。子どものように頬を膨らませてエドガーはベッドにダイブした。

「へーいか」

ノックも無しに扉が開く。間延びした声。
エドガーは投げ出した身体を一瞬で折り畳んで飛び起きた。
「おたんじょーびおめで…わっ」
「遅かったじゃないか!」
「ごめんごめん苦しいからはなして!」
抱き潰されそうになりうめき声を上げるセッツァーを渋々離し、エドガーは唇を尖らせる。
「来てくれないのかと思ったよ」

セッツァーは大小さまざまな箱をテーブルに並べている。

「たくさん祝ってもらったでしょーに」

これはマッシュから、これはティナとモブリズの子どもたちから、これはロックとセリスから、これはリルム、これはカイエン、モグとウーマロ、ガウ、ストラゴス、あ…これは偶然会ったゴゴから。
積み重なった箱を横目で見ながらセッツァーは、陛下が愛されてるもんだから俺は忙しくて忙しくて、と態とらしく肩を竦めた。

「…それでも、君に祝ってもらえなきゃ」

小さく呟く様子がまるでしょげている子犬のようで、セッツァーは声を出して笑ってしまった。
背を向けてくるくる髪を弄るエドガーに気付かれないように一葉の手紙を贈り物の山に滑り込ませ、いじけた大きな背中に抱き着く。
遅くなってごめんね、陛下。プレゼントは俺ってことで。
リボンを解きながら言えば、絆されたようにエドガーは息を吐き、そして満面の笑みを浮かべた。

「いいね、それ」


(2013.08.18)
Happy birthday dear Edger!

陛下誕セッツァーサイド


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