あー、かったりぃ・・・
ったくなんでいちご牛乳置いてねえんだよ使えねーな。
だいたい俺がいちご牛乳好きだって知ってん・・・
 
・・・て、あーごめんごめん。
いきなりこんなとこ見せて悪かったな。

俺は坂田銀時。
職業は・・・まあ一応俳優です、ハイ。

とはいってもまともな出演作はひとつしかないんだけど、その作品『銀魂』が初主演にして大ヒット!!
もうアニメも大人気でグッズもDVDも売れに売れ、俺は一躍スターの仲間入り!
…のつもりだったんだけど、なかなか映画化はしてくれないらしい。

同じ事務所のルフィさん(名前はあれだけど別に外タレじゃねえんだぜ。)やうずまきさん、黒崎さんもみんな映画の主演やっちゃってるのになー…
俺も早くデケェ画面で暴れまわりてーぜ!
っていうのがいまんとこの本音。


「坂田さーん。新商品の見本、届きましたけど。」
「あー、そこおいといて。」
「坂田さんが実物頼むなんて珍しいっすよね。」
「あー、うん…まあね。」

俺も含めた主要キャストは、発売されたグッズやDVDは頼めばもらえることになっている。
DVDは大抵勝手に届くんだけど、グッズは数も多いし、とりあえず資料が届くだけになっている。
それでチェックしてもし欲しければ、実物を送ってくれるってわけだ。

いつもは資料に目を通すだけですませてる俺なんだけど、今回のはちょっと気に入っちゃったんだよねー、ふふふ。

「坂田さん、もうすぐリハです。」
「あーはいはい。」

マネージャーにひらひらと手を振って、俺は着慣れた万事屋の衣装に着替え始めた。



音の雫〜君が奏でる僕の声〜


今回は新しいオープニングの撮影だった。
こうしたオープニングやエンディングは、レギュラーメンバーが勢ぞろいする数少ない機会なため、久しぶりに会う面子もなかなか多い。

リハーサルのためにずらりと並んだ面々のなかに、役柄どおりに眉間にしわを寄せた可愛いあの子を見つけて、俺は内心ほくそえんだ。

土方十四郎。
劇中では俺のライバルのようなポジションになっていたけれど、現実世界での俺とあの子は、その…なんていうか、ステディな関係になっていた。
(そこ、古いとか言わない!)

しばらく長編の撮影が続いたため、現場では会っていなかったので、真選組の制服に身を包んだ土方を見るのはひさしぶりだった。
うーん、いつ見ても可愛いね!
あんなストイックな黒の制服を着ているけれど、それに隠されたあの子の身体はそれはそれはやらしくて可愛くて…っていうのはここだけのハナシね!

「じゃあリハ行きまーす。」

撮影が終わったあとのことを考えて、ひとりにやにやする俺をダメガネが呆れた顔で見ている。
ああっ、もうこんなダメガネじゃなくて土方くんが万事屋に入ればいいのにー!
ちら、とあの子を見たけれど、やっぱり視線は合わなかった。


***


一通り撮影が終わり、めいめいの楽屋に戻ろうとする人群れの中から土方くんを見つけ出すと、俺はつかつかと歩みを早めるその肩を掴んだ。
振り返って、あきらかに嫌そうな顔。

「何だ。」
「このあと、暇?」

本当は土方のマネージャーに確認済みなんだけど、そこは本人の口から聞きたいじゃない?

「…べ、別に、何もねーけど・・・」

ほら聞いた!?目ぇ逸らしちゃってかーわいいね!嫌そうな顔しながらも断らないなんて、土方くんはやっぱり最強ツンデr

「ぶべしっ…!」
「顔がキモイ。」

殴られました。ぐすん。

「じゃあ着替えて準備したら俺の楽屋おいでよ。」
「ん、わかった。」

ホント素直でいい子。


楽屋に戻って、帰る支度をしている途中に土方がやってきた。
いつもながら、コイツは着替えとかがめちゃくちゃ早い。

「このあとどこ行くんだ?」
「んー、俺んち。」
「ふうん…」
「嫌?」
「や、別に…メシとかどうすんだ?」
「なんか出前とるよ。」
「そうか。」

今日届いたばかりのグッズの袋をちゃんと入れたことを確認して、俺は土方を連れて楽屋をあとにした。


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