※他×土要素あり
着流しを肩に引っ掛けただけの土方は、布団に押し倒された俺を跨ぐ様に膝立ちになっていた。 あごをつんと持ち上げ、目だけで俺を見下ろす。 「どうしてェんだ?」 「…」 「なあ、突っ込みたいんだろ?」 煽る様に土方が半ば起ち上がった俺の股間を撫でる。 ただ触れられただけなのにびくりと肩を揺らす俺に、土方は蔑みを込めた笑みをうかべた。 「…突っ込みてェ…」 「フン、いいぜ」 後ろについてかろうじて身体を支えていた俺の手を取ると、自分の後ろへと導く。 途中から意思を持った俺の指が後孔に触れると、それまで余裕を湛えていた土方が小さく息を飲む音が聞こえた。 そのままくちゅりと指を挿れれば、既に土方自身によって解されていた中は十分潤って脈打っている。 俺は空いた手で自身を数回扱くと、後孔から抜いた手を腰に回してゆっくりと土方の身体を引き下げた。 「…っ」 先端が入り口に当たると、土方はまた小さく声を漏らした。 俺が見上げると、相変わらず澄ました顔には耳から頬にかけて朱の気が差している。 (やっぱ色っぽいなオイ…) 目を細めて今度は両手で土方の身体を支えると、ぐちゅりと先端を飲みこんだ後孔にそのまま昂りを埋めていった。 「…、く」 奥まで飲み込ませたところで、ふうと息をついた俺は土方を見やる。 「どうした?早く動けよ」 俺の腹板に両手を乗せた土方は、蟲惑的なまなざしでそう言い放った。 瞬間、背筋に走る、電流。 びりりと脳に至った電気信号に命令をくだされたかのように、俺はそれを合図としてにわかに腰を動かし始めた。 「はァ、あ、あっ…あ!」 「…っ、く…」 されるがままに揺らされているにも関わらず、土方はまるで自分がリードしている体を崩さない。わざと大きく漏らす声もどうやら俺を煽るための餌らしい。 それに気づいていながら、興奮を増したそぶりで突き上げを早くしてやると、土方は負けじと孔をきつく締め上げてきた。 「あ、あ…ッ、もっと奥まで…来い、よ」 「言われなくても、突いてやるぜじょおうさま、よッ」 「あッ、ああっ…あ、ふ、あッ!」 土方は俺の腹についた手をがくがくと震わせながら、喉をさらけ出して天を仰いだ。 「あっ、あッ、そこ、もっと…ッ!」 「ここ、か…?」 「ひゃ、ああッ…ああ、あああッ!」 ぐっと腰を突き出して奥をつつくとひときわ大きな媚声があがった。 土方の前でぷるぷると震える自身を握ってやると、目を細めた土方が足に力を込める。俺を見つめたまま両手を置き直すと、自らも腰を動かし始めた。 搾り取る様に蠢く後孔の動きに思わず顔をしかめれば、土方はふっと笑う。 「そろそろ、限界なんじゃ、ねえの…?この、早漏」 へへ、と笑いながらも決して俺が言い返す事はない。 その代わりに土方の動きに合わせて腰を突き出してやれば、アと声を出しながら土方は目を瞑って快感に耐えた。 「なあ、気持ち、いんだろ…ッ?」 「…」 「俺のナカにっ、突っ込んでさ、きもちいーんだ、ろ?」 独り言のように土方がそう吐いた。 俺は何も言わない事が役目だと知っているから、敢えて黙って腰を動かす。 「男が、好きなんだろ、腰振ってんのが、好きなんだろ…ッ?」 「…」 「なあ、気持ちいいです、って、言えよ」 「…」 「この、幕府の狗が……ッ」 土方がふいに、動きを止めた。 「てめぇらだって、幕府の狗じゃねーか、よ……」 がくん、と土方の首が垂れる。 思わず動きを止めて息を詰めれば、いまだ繋がった部分だけが熱くじいんと疼いた。 (辛いならやめちまえよ、とか、) (言えればいいのに…な) 俺に跨がったまま俯く土方の表情は、下からでも容易には窺えない。 それでもわなわなと震える肩や手が、彼の感情を代弁しているかのようにひどく切なく空気を揺らした。 土方は真選組の副長様だ。 表向きには華々しい活躍をしているように見える彼が、裏ではどんな苦労のもとで組織を守っているのか、その真実を知っている者は俺を含めてもごく少数にすぎない。 接待という名目で逆らえもせずに身体を差し出しては、いいように誹られ、溜まったストレスの捌け口にされる日々。 そんな中で、土方はこうしてしばしば俺を呼び出しては、その歪んだ感情を俺にぶちまけた。いつもいつも胸裏にぐっと堪えて溜めた台詞を一気に吐き出すかのように、俺をなじり、蔑み、そして泣いた。 「土方…」 腰を支えていた手をするりと下方に滑らせると、土方は俯いたままでぴくりと肩を跳ねさせた。 太ももをゆっくりなぞって、そのまま力んで筋の浮いた手の甲のうえに、重ねる。 「ひじかた…」 「…」 重ねた手を引っ張ると、最早力の抜けた土方の身体は案外簡単に落ちてくる。それでもその魂は決して堕ちることがない。 それが、相手を余計刺激するのだと、こいつは知らないのかもしれないけれど。 むき出しの肌を合わせて、ぎゅうと抱きしめてやると、肩口に顔を埋めた土方が小さくないた。 こうして身体を合わせていると、互いの体温や鼓動が薄い皮膚を通して直に伝わってくる。土方はこうして、ちゃんと血の通った人間で、それを少なくとも俺はわかって身体を重ねているんだとそう伝えたくて、土方の肩にちゅうと口づけた。 「っふ、あ、あ…」 始めはゆるゆると、次第に速く、土方の中を擦ってやる。 感じるがままに土方が吐く息はあつくあつく肩を濡らして、まるでそこから身体が溶けていってしまうような気さえした。 「あ、あっ、ア…っ」 次第に限界が近づいた俺が感情の高ぶるままにがんがんと腰を打ち付けると、二人の間に挟まれた土方の自身がいっそう堅くなってびくびくと脈打つのが分かった。 「…くッ」 「あ、ああ…!!」 ついに頂点に達した俺が精液を吐き出した、と一瞬遅れて、土方の自身からもぴゅううと白濁が漏れる。 「はぁ、はぁ…」 「ひじかた…」 「…」 あまり広くもない部屋に、互いの息だけが重なって満ちてゆく。 何も言わない土方の、とうに力が入らないらしい身体を俺はまたぎゅうと抱きしめた。肩にしがみついたままの土方の手にもぎこちなく力が込められて、俺はわずかに目尻を緩めた。 「好きなだけ、泣けばいいから」 まだ俺のモノをくわえこんだままの後孔がぴくんと収縮して、そこから涙のように白濁が一筋垂れた。 |