君といるだけで


今日は珍しく部活が休みだった。天馬達は河川敷で練習すると張り切っているのを見かけた。俺はと言えば、自然と神童の家に遊びに行くことになっていた。別に、神童が特別誘ったわけでも、俺が行くと言ったわけでもないが、どちらともなく遊ぶ話をしていて。気づけば場所が神童の家になった。
相変わらずデカイ家だなと思う。これだけデカイと、もはや家に見えない。玄関まで遠いし。でも昔からの光景なので、俺は気にせずその少し長い道のりを神童と歩く。
メイドさんや執事さんの横を抜けて神童の部屋に入る。しばらくするとお茶とお菓子が出てきて、そのあとは二人きり。昔から全く変わらない流れだ。
しばらくは二人で他愛のない会話をしていたが、ふと部活の話になった時に、思わず神童の顔を盗み見た。前ほどじゃないが、それでもやっぱり、人の何倍も頑張ってる神童だ。疲れているんじゃないだろうか。

「……霧野?」

名前を呼ばれてハッとする。なんだ?と聞けば、ぼーっとしていたが大丈夫かなんて。少しは自分の心配しろよと思ってしまう。しかしまあ、神童らしい。

「神童こそ、最近疲れたりしてないのか?」

「俺は別に……」

「いつも頑張ってんだからさ。少しぐらい、甘えてくれてもいいけど?」

半分冗談、半分本気ぐらいの気持ちだった。力抜いてほしいのは事実だし。でも、神童のことだから、素直に甘えてくるなんてことないよなぁなんて思って。
だから、次に感じた温もりに、心底驚いた。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

こてんと、神童が俺の肩に寄り掛かって来る。いつもより近い距離。いつもより近い神童の顔。いつもより近い、いつもより、近い……。
ちょ、ちょっと待て。落ち着け俺。何この展開すごい幸せ……じゃなくて!ちょっと予想外で、さすがに上手く反応出来ない!
そんな俺には気づかず、神童は俺に寄り掛かったまま、ふにゃりと笑う。すごいかわいい……って、だからそういう問題じゃなく。
いや、甘えていいって言ったの俺だしな。別に神童は悪いことしてないけど、いつもより近い神童とか、神童の体温とか、ふにゃりと笑った顔とか、微かに触れてる手とか、いろいろ破壊力抜群で、俺はどうしたらいいのかわからないよ。とりあえず、理性を保っていれば神童の為になるだろうか。

「……霧野、きりの」

「な、なに?」

「きりのー」

霧野、きりのと。俺の名前を連呼する神童に、くらくらしてきた。だってかわいい。なに?と問い掛けても、えへへという、かわいい笑みしか返って来ない。

「らんま、る」

急に名前で呼ばれて、びっくりする。混乱したまま、え?と繰り返していると、

「久しぶりに名前で呼んでしまった……」

なんて、恥ずかしそうに言ってきた。
……お前は俺を殺す気なのか。
思わず片手で顔を覆う。すると、具合でも悪いのかと焦ったように聞いてくるので、大丈夫だと返す。その必死さに思わず笑ってしまう。
少し落ち着いたところで、神童をじっと見てみる。やっぱりちょっと、理性とかいろんなものと戦わなきゃならなくて視線を逸らそうとしたら、それまで視線を感じていたのか、神童が俺を見た。そして、霧野?と首を傾げた。
……いや、だからさ、首傾げるとかやめろ。かわいいだけだから。ちょっと俺、抜け出したい。幸せ過ぎて怖いから抜け出したい。

「霧野、」

今度はなんだ!?と、思わず身構えた。しかし神童は、そんな俺には気づいていないのか、そのまま言葉を続けた。

「いつも、ありがとう」

その言葉に、思考が一旦停止する。そして、再び思考が動きはじめて、ぐるぐると考える。いつもって、俺、何かしてたっけ?見当もつかない。

「霧野が、いつも傍にいてくれるから、安心できるんだ」

そう、恥ずかしそうに言う神童を、思わず抱きしめた。
え?と、小さな声が聞こえた。状況を理解出来ないのか、困惑している神童の耳元に口を近づけた。

「好きだよ神童。好き。大好き」

すると、面白いぐらい神童の顔が真っ赤になった。

「え、き、きり、の……?!」

「大好き、愛してる」

「う、ぇ?!ちょ、ちょっと待っ……!」

「待たない。もう死ぬほど好き。かわいい神童。かわいい」

「も、もう、やめっ……」

恥ずかしいって!と言われたけど、やめない。かわいい神童が悪い。さっき俺、頑張ったし。

「神童は?」

「え?」

「俺のこと、好き?」

ぼん!と、音がするんじゃないかと言うぐらい、神童の顔が真っ赤になる。それがほぼ答えに近いんだけど、やっぱり神童の口から聞きたいので、俺は神童の口が開くのを待つ。

「……す……すき、だ」

その答えに満足して、俺はまた、神童の耳元で好きだと連呼した。
恥ずかしさのピークに達して、神童が泣き出すのは、また後の話。







君といるだけで
(最高に幸せになれる)




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勿忘草の花言葉の亜梨雛さまより、相互記念文としてとっても素敵な蘭拓文を頂きました!
リクエストは甘ったるい蘭拓だったのですが、なんかもう桜兎の理想過ぎて・・・!!!
蘭ちゃんじゃありませんが、名前を呼んだ後に照れるたっくんと首を傾げるたっくんに骨の髄までやられました(笑)
たっくんも蘭ちゃんも可愛すぎてツライ・・・!!
改めて、蘭拓の凄まじい魅力に気づきました(笑)

最後になりますが、亜梨雛さま、桜兎と相互してくださってありがとうございました(*^▽^*)!!
勇気を出してお声をかけて本当に良かったです(笑)
それでは、これからもよろしくお願いします!

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