その願いはきっと届いてる





「・・・あの、ヒロト?そうやってくっつかれると食べづらいんだけど」

「えーだって年越しそばって好きな人のそばで食べるものでしょ?」

「そうだっけ・・・?」


ぴとっとヒロトが磁石にでもなったかのように俺にくっつく。コタツの一辺は1人分のスペース(ん?長さっていうのかな?)しか無いっていうのに、無理やり隣に座ってるから狭いことこの上ない。


「確かに、年越しそばには『末永くそばに居られますように』という願掛けの説もある」

「えっ、まじかよ!?初めて知った!!」


そう言ったのは俺とヒロトのやり取りを目の前で見ながら黙々と蕎麦を食べていた風介だ。形から入るタイプの風介は冬はちゃんちゃんこ(半纏)を愛用している。毎年のことだから見慣れてはいるものの、普段の半袖半ズボン(+腕まくり)の格好を思うとやっぱりどこか可笑しい。で、そんな風介の言葉にいち早く反応したのはもちろん晴矢。箸を握り締めたまま立ち上がりそうな雰囲気だ。と、思ったら立ち上がった。え、まさか。


「・・・おい。何のつもりだ貴様」

「いやだってそばに居ないと」

「なぁんだ、晴矢もやっぱり大好きな風介のそばにいたいんだねー」

「そんなんじゃねぇよ!!」


ヒロトが相変わらず俺にくっつきながらニコニコと2人を見つめる。そばに居ないと、ってついさっきまでも風介の隣りでコタツに入ってたじゃん。どうして2人共そんなに近寄ってくるのかな。案の定、風介はものすごく鬱陶しそうな顔で晴矢を睨んでる。うん、わかるよ風介。俺だってちゃっかり俺の腰に手をまわして「あーんしてよ緑川ぁ」なんて言ってくるヒロトが鬱陶しくって仕方ないもん。


「・・・晴矢。せめて私の後ろにまわってくれないか?」

「は?何でだよ?」

「で、コレを着ろ。」


そう言って風介が着ていた青いちゃんちゃんこを脱いで晴矢に渡す。晴矢は頭にはてなマークを飛ばしながらも言われたとおりにして、風介の背中に覆い被さるようにして座った。なんかまるでコアラみたい。俺は風介の意図がイマイチわからなくって、首を傾げて見ていたけれど、ヒロトはすぐに思い当たったらしく、嬉しそうに声を上げた。


「あ!わかった!二人羽織だねっ!」

「そうだ。そして私に蕎麦を食べさせろ。もちろん晴矢の分も」

「それってお前が楽して食いたいだけじゃねーか!!あと俺の分まで食う気かよ!!?」

「あははっ!確かに風介と晴矢なら息ぴったりかもね!」


晴矢のツッコミに思わず俺も笑い出してしまった。二人羽織かぁ、楽しそう。そう呟くと、ヒロトが目を輝かせて俺を後ろから抱きしめた。いつの間にか俺の箸まで奪ってる。


「言っとくけど、俺達のほうが息ぴったりなんだからね!なんてったって相思相愛なんだから!!」

「なっ、俺達だって相思そ「晴矢、蕎麦がのびるから早くしろ」被せてくんなよ!!」

「二人羽織で愛情の度合いってわかるものなの・・・?」


俺の疑問は晴矢とヒロトには聞こえていないらしく、頭上では先に食べ終わったほうの勝ちだよ!とか望むところだ!と威勢の良い声が飛び交っている。風介はと言うと、何だかんだこの勝負を面白がっているようで、楽しそうな顔で「早く食べたい」と催促していた。チラッと壁にかかっている時計を見ると、時刻は午後11時38分。テレビでやっている年末番組にはもう誰も興味がなく、ただ明るい司会者の声だけが部屋に流れていた。


「「それじゃ、スタート!!」」

「風介、箸ごと食うなよ!?」

「晴矢の食べさせ方が下手くそなんだ。私は問題ない。」

「ほら緑川もっ!あーんっ」



目の前に蕎麦を絡めた箸が出される。最早これって二人羽織関係ないんじゃないんだろうか。ただの蕎麦の食べさせあいっこ。もしくは早食い競争。そう考えていると視線を感じた。チラッと上を見上げると、ヒロトが満面の笑みで俺を見つめながら、口を開けるように催促する。しょうがなく口を開いて、蕎麦をもぐもぐしながら正面の晴矢と風介を見ると、風介が噛んでいるのか心配になるくらいのスピードで蕎麦を平らげようとしていた。それに調子にのった晴矢がどんどん蕎麦をすくっては風介の口に運びこむ。俺はこのくだらなくも暖かい、ふざけた年末の過ごし方に思わずふふっと笑みがこぼれて、それで。


「これで来年もずっとみんなのそばに居られるね」


大好きな人たちに囲まれてる俺は今年も来年も、ずっとずっと幸せです。



(もちろんだよ緑川っ!!)
(フッ、でも勝負は私達の勝ちだぞ)
(あー!!風介まじで俺の分まで食いやがった!!)



********************


もう年は明けてますが(笑)
どうしても書きたかったんです・・・!
そしたら長くなって小ネタじゃなくなりました^^;
ほのぼのしてる南涼と基緑の年末妄想です(笑)

今年も南涼と基緑を愛でることをここに宣言します(*^▽^*)


20120101 桜兎
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -