シンデレラ×魔法使いパロ | ナノ


シンデレラ南沢×魔法使い倉間パロ 



「・・・あの、聞いてます?」

「嫌だ」


我が儘言わないでくださいよシンデレラ。
そう何度も言ってるのにシンデレラはずっと嫌だの一点張り。
魔法をかけて、古びたワンピースは輝くような白いドレスに、カボチャは馬車に、ネズミは馬に、ガラスの靴まで用意して。
それでもこのシンデレラは頑なに舞踏会へ行くことを拒否する。


「・・・今夜しかチャンスは無いんですよ。何がそんなに不満なんです?」


シンデレラのお相手、王子様の名前は兵頭司と言うらしい。王族だからと言って権威を振るわず、民衆の声を聞き、頼りになると評判の王子様は顔だけで無く性格も良い。何一つ申し分なんて無かった。現にシンデレラも王子様に会いたくて魔法使いの俺を呼び出した(正しくは呼び寄せた)はずだ。なのに何で床に座り込んで動こうとしないのか俺には理解できない。


「・・・俺の相手は、お前だ。アイツじゃない」

「・・・違いますよ。これはシンデレラと王子様の物語。俺はシンデレラにほんの少しの勇気とキッカケを与えるだけの小さな登場人物。だからシンデレラだって物語を進める為に、誰もが望んでいるハッピーエンドを迎える為に俺を呼んだのでしょう?」

「違う。俺は、お前に会いたかったから」

「・・・っ」


魔法使いとシンデレラが結ばれる結末なんて存在しない。それは誰も望んでいないから。それなのに、この人はひどく悲しそうな表情をする。俺の胸も、何故か痛かった。


「・・・0時が過ぎれば、俺は魔法が解けて元の『灰かぶり』に戻る。ただのシンデレラだ。何の力も奇跡も無い。・・・だけど、お前は? お前は、何になる?」

「・・・俺は、役割を終えても『魔法使い』のままですよ・・・」


あなたに魔法をかけて物語をハッピーエンドに導くための存在。それだけの役割。主役になんてなれない。シンデレラ、俺はあなたにとって手段であり一夜だけの奇跡でしか無いんです。


「俺は、魔法なんていらない。お前が居れば良い」

「・・・そんなの、無理です」

「でも“嫌”じゃないんだろ?・・・なぁ、俺の為に生きろよ。俺の隣に、ずっと居ろよ」

「・・・っダメ、です。そんなの、許されない・・・っ」

「お前が良い。俺はお前を選びたいんだ。・・・誰にも許されなくても良い。俺とお前だけの、世界があればいい」

「・・・シンデレラ」


この人は残酷だ。俺に魔法を捨てて、世界を敵に回せなんて言う。杖を持つ手がカタカタと震えて、俺はツバの広い大きな黒い帽子で顔を隠すように項垂れる。それでも、じっと俺を見つめるシンデレラの視線からは逃れられそうに無い。
0時が、舞踏会の終わりが、魔法の終わりがもうすぐそこまで来ているかも知れないと言うのに。


「・・・魔法使いとしてじゃない、“お前”の本音が聞きたい。・・・お前の、名前は?」

「く、らま・・・」

「倉間、・・・・・・俺のこと、好きだろ?」

「・・・・・・すき、です」

「・・・だったら。俺と一緒に、生きて」

「・・・は、い・・・っ」


これはきっと、禁忌なのだろう。許されない物語。あってはならない結末。だけど、俺はもう手遅れだった。初めて会った瞬間から、魔法をかける前から、俺はこの人の、・・・シンデレラの永遠に解けない魔法にかけられていた。
絶対に南沢さんを好きになる、そんな運命のような魔法を。


「・・・でもやっぱりこんな結末、誰も望んで・・・」

「なぁ、倉間。誰もが知ってる、望まれた物語の結末を覆す方法を知っているか?」

「・・・何ですか、それ・・・?」

「俺とお前が、シンデレラと王子様の物語の数百倍幸せなハッピーエンドを迎えれば良いんだよ」

「!」


それはきっと、誰かに受け入れられて望まれた物語になる。シンデレラと魔法使いの物語が、いつか世界で許される日が来る。それまで俺たちはただ幸せな日々を送れば良い。


「ほら、最高の結末だろ?」

「・・・あなたは本当、とんでもない魔法使いですね」

「ばーか、シンデレラだよ」


大好きな人と結ばれたい、それを夢見て魔法にかけられたんだ。
0時を告げる鐘が、城の方角から聴こえてきても俺たちは抱き合ったままだった。


さようなら、星降る夜の魔法使い
(朝が来ても、ずっと俺の隣で)





童話パロ第2弾!(笑)
『シンデレラ』の物語を知っている南沢さんと倉間のシンデレラと魔法使いの物語((ややこしい
最初は我が儘言いまくるシンデレラ(南沢さん)が書きたかっただけなんですけどね・・・(笑)

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