僕らの青い春は予約済み



ある日の放課後、円堂監督発案で突如設けられた『大掃除DAY』によって俺達は軽い練習の後に学年ごとに振り分けられたそれぞれの掃除場所で精を出していた。ちなみに1年生は用具倉庫担当で、ついさっきまで埃や砂っぽい倉庫内でボールを磨いたり、要らない備品を整理したりとそりゃあ真面目に(ウソ、本当は結構ふざけてたけど剣城くんに怒られた)やってた。


んで、俺は今その際に出てきた大量のゴミを捨てに輝くんと一緒にゴミ置き場に行って来たところ。じゃんけんに負けたのはちょっと悔しいけど、あんな薄暗いとこにいつまでも居るよりかはずっとマシだと思う。ちょっと息抜きって言うか、サボれるし。どうせ今頃また天馬くんと信助くんが何かやらかして剣城くんが溜め息吐いてるんだろうなぁ。それか、色んな意味で疲れきって自暴自棄になって不貞寝してるかも。どっちにしろ、どんまい。


それはまぁ良いとして、ゴミ捨てに向かう途中で俺たちは三国先輩からあることを頼まれた。頼まれた内容は至って簡単、旧部室掃除を担当している神童先輩と霧野先輩に掃除の終了時間を伝えること。人数の多い2年生はロッカールームと旧部室と男子トイレを担当で、比較的汚れていないと言うことから旧部室は霧野先輩たち2人だけで掃除してるらしい。めんどくさいけどついでと言えばついでだし、輝くんも快く了承したから俺に断る術も無く、さっさとゴミを捨てて旧部室に来た。あとは先輩たちに時間を告げて倉庫に戻るだけ。


・・・だったんだけど。


(キスしてやがるし・・・)


案の定と言うか、やっぱり。
掃除してる割には静かだと思ったんだよな。良かった、扉を開ける前に窓から中を覗いといて。普通に真正面から入ってたら大惨事、とりあえず気まずいことこの上ないだろ。って言うか部活(正しくは掃除)中に何やってんだよ。俺たちだったから良かったものの、他の生徒や先生に見られたらどうする気なんだ。まぁ、体制からして霧野先輩が強引にやってるっぽいけど。でも瞳を伏せて抵抗せずに霧野先輩のジャージの裾を掴んでるあたり神童先輩も満更じゃなさそう。いやいやいや、それで良いのかよ元キャプテン。それにしても本当、絵になってるよなこの2人。さすがほもゆりと名高いだけあってどっちも男とは思えな・・・って、俺まで何考えてんだよ!


(じゃなくって、)


俺は内心でツッコミを入れつつ、隣で同じようにして窓を覗く輝くんの顔をちらりと見る。さっきから随分と静かだけど、輝くんは一体どうし・・・・・・なんて、考えるまでも無かった。輝くんは、熟した林檎みたいに真っ赤になって固まってた。


「・・・・・・輝、くん?」

「・・・・・・はわっ!!?ま、まままままさっ、マサキくん!どっ、どどどどどうしたの!!?」

「どうしたは輝くんのほうでしょ。顔真っ赤だけど」

「うぎっ、だ、だだだだって!だってアレ・・・!!」


そこまで言って口をパクパクと動かすものの、一向に続く言葉が出てこない輝くん。その瞳はきょろきょろとあっちを見たりこっちを見たりと忙しなく、見ている俺のほうが目を回しそうな勢いだった。アレ、って言うのは言うまでも無く俺たちに見られてると気づきもしないでキスしてる霧野先輩たちのことだろう。と言うことはつまり。俺はニヤリと意地悪く笑ってたった今思いついたことを口に出す。


「・・・もしかして輝くん、興奮してんの?」

「!!!?・・・ち、ちがっ、違うから!!そんなんじゃないです!!」

「じゃあ、キスシーン見て照れてるんだ?」

「そっ、それは・・・!!」


ごにょごにょと「・・・だって僕、目の前で見たのは初めてだし、・・・よりによって先輩たちの・・・」と尻すぼみになりながら言う輝くんを見て、俺は図星か、とニヤニヤ笑いが止まらなかった。俺はまだ耐性があると言うか、慣れてるし(どっかの社長と秘書が目の前でいちゃつきやがるから!)何とも思わないけど、キスシーン見たくらいで真っ赤になるなんて輝くんはウブだなぁ。これじゃ、俺が剣城くんと天馬くんがキスしてるとこも見たことあるなんて言えないや。でも良かった。今更と言えば今更だけど、輝くんがそういう同性同士のキス・・・って言うか恋愛に嫌悪感を持ってなくて。その事に安心した俺は更に意地悪な質問を投げかける。


「もしかして輝くん、ファーストキスもまだとか?」

「えっ!!?・・・っそ、そう・・・だけど・・・って、ふ、普通じゃないの・・・?」

「何言ってんの。まだとか遅すぎるよ!あり得ないって!!」

「え、えぇ!?で、でも・・・まだ中学生になったばかりだし・・・ま、マサキくんはしたことあるの・・・?」

「そんなの当たり前じゃん。みんな中学生になる前にとっくに済ませてるって!まだなんて輝くんくらいだよ」


そう言うと真っ赤な顔のまま眉を下げて「そんなぁ・・・」と涙目になる輝くん。やっばい。まじで面白すぎる。いくら最近の子は進んでるからって(年寄りみたいって言うなよ!)みんながみんな小学校の時にキスしたことがあるわけないじゃん。俺だって本当はまだだし。相変わらず人を疑うことを知らなさすぎって言うか、からかいがいがあるよな。まぁ、そこが輝くんの魅力のひとつなんだけど。

でも、そっか。ふぅん。輝くんもまだ、か。


「そんなこと言われても・・・僕、今までそういう興味も相手も居ませんでしたし・・・」

「・・・・・・じゃあ、してみる?」

「え?」

「だから、俺と。ファーストキス」


輝くんとなら、しても良いよ。そう最後に付け加えた俺は、ずるい。本当は、輝くんじゃなきゃ嫌なのに。輝くんだけが、良いのに。だけどこの気持ちは、目の前できょとんとする彼にはまだ秘密だから。どんな反応をされても「冗談に決まってるじゃん」って笑って返せるように、俺はこの距離を保たなきゃいけない。

それでもやっぱり気になる。輝くんは、何て答えるんだろう。
俺の鼓動だけが世界に響いているかのような一瞬の沈黙の後、やっと口を開いた輝くんの言葉は俺にとってかなり予想外のものだった。


「・・・・・・・・・こ、」

「・・・こ?」

「・・・・・・き、キス・・・は、恋人になってからじゃないとダメです・・・!!」

「は!?」


間抜けな声をあげて呆然とする俺を他所に、輝くんはそのままダッシュで旧部室を後にする。ポツンと取り残された俺は輝くんを追いかける選択肢なんて思いつくワケも無く、その場に立ち尽くしたまま頭の中でさっきの輝くんの言葉の意味を反芻するだけだった。


(恋人になってからじゃないと、って・・・それって)


俺とキスするのは嫌じゃない、ってこと?
辿り着いた結論に、今度は俺が真っ赤になる番だった。え、嘘だろ。だって、そんなの、あり得ないだろ? どんだけ俺に都合のいい解釈なんだよ。
そう思いたいのに、何度考えてもやっぱり否定できない。じゃないと、輝くんが逃げ出した理由に説明がつかないし。


俺は壁伝いにずるずると座り込んで、口元を手で覆い隠しながらぼそっと呟いた。


「・・・あー、奪っとけば良かった・・・」


0


(僕は君と、同じ色に染まって歩き出す)
(・・・神童、いつになったら出れると思う?)
(さあ・・・)


******************


最後の最後までキスさせるか悩んだのですが結局しませんでした\(^q^)/
桜兎は一体いつまで両片想いなマサ輝を書き続けるんでしょうね(笑)
何ていうか、桜兎の中ではマサキは付き合ったらとことん意地悪(常に主導権握ってる)なイメージがあるので、片想いしてる時の基本的には意地悪だけど肝心なトコでは踏み込めないヘタレなマサキを書くのが楽しくって仕方ないんです^^;
キャラ崩壊と妄想も甚だしいですねwwwしかも今回はちょっとだけ書き方を変えてみたので余計に酷さが引き立ってます(笑)

そんな訳で、長々と書き連ねましたが(笑)
改めまして、蓮奈さまお誕生日おめでとうございます〜!!
もう何日過ぎてんだよ!って感じですが、予定してたよりも話が長くなってしまったんですすみません・・・orz
本当はもう少し長くなりそうだったとか言えな((黙

以前に質問回答はさせて頂きましたが、こうやって蓮奈さまに小説を捧げるのは初めてだったのでものすごく緊張しました・・・!!
その割には日本語が多々おかしかったり長すぎて読みづらかったりと欠点ばかりですが(汗)、おめでとうの気持ちと愛情だけは無駄に注いでますので少しでも気に入ってくださると嬉しいです・・・!!

こうやって蓮奈さまのお誕生日を祝えることが出来て桜兎はとっても幸せです(*^^*)
いつも本当にありがとうございます!だいすきです!!

それでは、長文&乱文失礼しました!
(蓮奈さまに限り、苦情・返品・ダメ出し・お持ち帰りOKです^^)




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