1 小鳥遊side 「おはよー佐藤さん!」 「よお、種島。お前、背伸びたんじゃねぇ?」 「ほんと!?」 「いや、嘘」 (今日も軽快だな、佐藤さん……) ある意味洗礼された流れにもはや感動を覚える。 きーっと佐藤さんを叩こうとするも額を手で抑えられてじたじたしている先輩。いつものワグナリアの風景だ。 「おはよう小鳥遊君」 「おはよー」 「おはようございます。相馬さん、門田さん」 そこへちょうど相馬さんと門田さんがやって来た。二人とも俺の見ている方を見てまたかと笑っている。 「今日も佐藤くんは飽きないね。」 「そうですね」 2人は、ちぢんだんじゃねぇ?ないよっ!と相変わらずの言い合いを続けている。 「毎回全力で応えるぽぷらもぽぷらだけどね」 いい加減、無視してもいいのに。という門田さんの表情はにやけている。最近思ったのだが、門田さんもなんやかんや相馬さんと同じ部類なんだと思う。 「あれだよね… 轟さんが店長の事をうかれて佐藤君に話すと、彼女を好きな佐藤君はその辺にいる種島さんに八つ当たりする…… 世の中って循環してるよね」 「はいもう、見事な悪循環です」 嬉しそうに話す相馬さん。門田さんも何も言わないだけでニヤニヤしてる。 「かたなし君助けて!」 「すみません先輩。出来ません」 1人じゃ敵わないと思ったのか近くにいた俺に助けを求める先輩。 「あれ、意外。前まで助けてなかった?」 門田さんの言葉に、どうして…?と、佐藤さんにパイナップルヘアーにされた先輩もつぶやく。 「まさか、佐藤さんに何か弱みを……」 「先輩、俺…… からかわれる先輩もいたく可愛いことに気づきました!」 「裏切り者ーっ!」 と半泣きで叫ぶ先輩。くっ、そんな先輩も可愛いです…… 「小鳥遊君、その顔アウトだからね」 門田さんが若干引いているような気もするが、そんなのは気にしていられない。 「いいよ、もう頼らないよっ!別の人に助けてもらう!」 プリプリと怒って言う先輩。 「先輩可愛い!」 そこに偶然通りかかったチーフ。 「あっ八千代さん!」 「あら、どうしたの?ぽぷらちゃん」 これまた妙なタイミングで通りかかったものだ。ここぞとばかりに訴える先輩に、チーフがとった行動は、 「弱いものいじめはダメよっ!!」 佐藤さんに説教。言ってることは正しい。だが、 「どっちがだよ。刀抜くな。」 腰の刀に手をかけ丸腰の人に迫るこの図はあきらかに弱いものイジメである。 「八千代ちゃん……、ファミレス店内で刀は流石に抜いちゃだめだよ?」 「いや、どこでもだめですから」 やっぱりどっかずれてるんだよな、この人。 「いじめてるんじゃないし、からかってるだけで」 「それはいじめと同じなのっ! 全くもう、何か日頃よっぽどイライラすることでもあるのっ!?」 あ、八千代ちゃん、それは…。と小さく門田さんが呟く。 「ねえよ」 案の定、佐藤さんは余計に機嫌が悪くなった。 「「ごめんなさい………」」 「いいえ!」 説教を続けていたチーフの言葉は佐藤さんの地雷を踏み、そのまま佐藤さんは仕事に戻ってしまった。 「佐藤君…、前『杏子さんが好きなの?』って聞いて以来なんか怖い…」 そう言って相馬さんに相談するチーフ。これまた絶妙な人選だな……。 「え、何。八千代ちゃんそんなこと佐藤に言っちゃったの!?」 「ええ、まあいろいろありまして。そう言えば門田さんそのとき休みでしたね」 「そんな……酷い」 そう呟いて俯く門田さん。やっぱり門田さんは佐藤さんを本気で応援してるんだな。さすが親友。 「なんで教えてくれなかったの!?そんな面白いこと!」 ああ、佐藤さん。いろいろ頑張ってください。 [しおり/戻る] ×
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