プレゼントは君の勇気で
11月9日、俺は姉さんと2人で買い物に出かけていた。

明日は俺の誕生日。そのケーキはプレゼントとして姉さんが手作りするというのがここ数年のお決まりになっている。その材料を買うため品揃えの良いショッピングモールまで来たのだ。


「ねえ、本当に今年もケーキで良いの?欲しいのがあれば買うよ?」


生クリームに卵に…と順調に買い進めていたらそう姉さんが言い出した。や、やばい!


「いや、本当に大丈夫!姉さんのケーキ美味しいし」


俺が出来るだけ笑顔でそう伝えると、不満そうながらも納得したようだった。

良かった。焦ったのはばれなかったみたい……。

そもそも、なぜケーキ作りが恒例になったのかと言うと、俺へのプレゼントに関して金に糸目をつけなさすぎたからだ。何年か前にブランドものの時計を買って来たときには引い……驚いた。


流石に何十万とかそのレベルではなかったけれどそれでも学生には手が出せないもの。曰く、お年玉とかお小遣いを貯めていたらしいのだが、これ以上物がグレードアップされても困るし……ということで提案したのが始まりだった。


「よし、こんなもんかな。買ってくるから忠くんはレジ過ぎたところで待ってて」

「分かった」


普通ならカゴも重いしついて行くんだけど、一応プレゼントであるケーキの値段は見せたくないらしい。そこらへんしっかりしてるんだよな、姉さん。

そういえば、今年はシンプルなショートケーキにするって言ってたな……。ツッキーにも食べさせてあげたいけど。


「……山口?」


ツッキーのこと考えてたからかな。なんかツッキーの声が……って


「あれ、ツッキーも買い物?」


専門店側の通路から来たツッキーの手には洋服屋の袋があるからまあそれは確かだろう。


「まあ、いろいろと。そっちも1人?」

「いや、こっちは…あ」


姉さんとだよ。と続けようとしたらちょうど会計を終えた姉さんが帰ってきた。ツッキーに気づいて眉間に皺よってるオプション付きで。


「……なんでツッキーくんがいるの、ストーカー?」

「誰が好き好んで愛さんなんかのストーカーをしなくちゃいけないんですか」


案の定2人の嫌味合戦が始まる。

…でもねツッキー。多分姉さんは俺のストーカーをしてるんじゃないかって意味で言ったんだと思うよ。それこそあり得ないけど。

ツッキーは姉さんのことになると墓穴掘りまくっている気がする。あのツッキーが。でも姉さんもそれに気づいてるけどあえてスルーしてるっぽいのがたち悪いんだよな……。

言い合いになってる2人を見ながらそんなことを考えいたけど、そろそろ終わらせなきゃ。


「姉さん、荷物持つよ。もう用事は無いんだよね?」

「え、うん。大丈夫だよ」

「ツッキーはまだ途中?」

「いや、もう帰るとこだけど」


持っていた雑貨屋の袋を体の後ろの方に回しながら答えたツッキーに、じゃあ一緒に帰ろうよ!と提案すると2人揃って嫌そうな顔をしながらもちゃんと出口に向かって歩き出した。

ほんと、2人とも素直じゃないんだからなー。


「へえー、愛さんがケーキ作りですか。食べても平気なの山口?」

「意外と上手なんだよー。あ、今年はショートケーキなんだって、ツッキーも食べようよ」

「絶対あげな、へぇっくしょいっ」

「あれ、姉さん風邪?」


3人で仲良く?帰っていたらいきなりくしゃみをした姉さん。さむー、と腕をさすっている。確かに今まで店内にいたから分からなかったけど風も吹いてきて寒くなってきた。

……これはちょうどいいかもしれない。


「あ、俺買いたいものあったんだった。さっきあったコンビニで買ってくるから先歩いてて?」


すぐ追いつくから!と姉さんに買ったものを渡して、そのままいま来た道を戻る。ちょっと山口って声が聞こえたけど無視だ。

ごめん、ツッキー。でも俺見ちゃったんだよね。

ツッキーの持ってた買い物袋。ラッピングされたものが入ってたから多分俺の誕生日プレゼントなんだろうなってのは勘付いてたんだけど、もうひとつ女性向けのラッピングされたものが入ってた。

おそらく姉さんへのものだろう。毎年買うは買っているんだけど渡せなくて落ち込んでたし、別に落ち込んでないとか言いそうだけど。
弟としても幼馴染としてもそろそろ進展してもらいたいんだよな……

せっかく2人きりにしてあげたんだから、頑張れツッキー


プレゼントは君の勇気で


「行っちゃった。そんなに大事なものなのかな……」


山口がコンビニに向かうのを呆然と見送り2人で再び帰路につく。


「そういえば、愛さんも風邪とか引くんですね。なんとかは風邪ひかないって言うのに」

「ツッキーくんうるさい!私これでも成績良い…っくしょい!」


もう少し女らしいくしゃみできないんですか?なんていつもの通り嫌味を吐く。

自分でも素直じゃないなとは思うが口から勝手に出てくるのだからどうしようもない。


「うー、さむ。やっぱりもう一枚中に着るべきだったな」


愛さんは相変わらず腕をさすってる。そりゃあ、上着を羽織っていてもそれだけ襟ぐり広かったら首元も寒いだろう……やっぱり今だろうか。

実は、今の寒さを少しだけ和らげる手段を僕は持っている。だが、拒否をされたらそれこそ終わりだと思うとなかなか行動に移せない。

僕がぐだぐだ考えている間にも、愛さんはくしゃみを連発している。

ああ、もう。


「あの、愛さん」

「ん?」


俺の方を見上げた愛さんは身長差的に上目遣いになってる、鼻頭は少し赤くなってるし……なんなんだこの人。

口を開くとどうせ口から出るのは嫌味だけだと、無言で袋から取り出したそれを渡す。


「え、プレゼント?……もらっていいの?」

「…….はい。それでさっさと開けてください」


本当にいいの?としつこい愛さんを促し開けさせる。


「あ、マフラー。ツッキーくんセンスいいね」


そりゃ、あなたの好みは分かってるつもりなんで。

なんてもちろん言えるはずもなく。出てくるのは
いいからさっさと使ってください。なんてふてぶてしい言葉だけ。


「おー、あったかーい。ありがとうツッキーくん」

「……別に。山口のプレゼント買うときに商品二つ買うと割引きだっただけです」


これは、事実だから嘘は言っていない。だったら自分の買えよと言われたらお終いだけどね。


「でも、ありがとう」


珍しく僕に向けられた笑顔を見て、山口のプレゼントにお菓子でもプラスしようかな……と思った。








*****

キリリク、咲さんより"山口姉弟と月島でふわふわした話"ということでした。

ふわふわしていたでしょうか?全く自信がありません……。ふわふわの意味を模索した結果、迷走してしまったので、勝手にちょうど近かった山口の誕生日も絡めてしまいました。

その割りに前日の話だし山口を祝ってないしで良く分からない話になりましたが、これが今の私の精一杯です(ーー;)

咲さんのみ、書き直し等受け付けます。

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