喜びを知らない僕が素直に喜べるようになった。
誰かの幸せを自分の事のように喜べる、そんな感情を彼女が教えてくれた。誰かの幸せを願って、自分の事のように喜ぶ。そんなことは、少し前の僕には出来なかった。自分の幸せを願う事も、嬉しいと思うことすら恐れていた僕に彼女は幸せになっていい、笑いたい時に笑って、喜びたい時に喜べばいいと教えてくれた。

少し前までの僕は、随分機械じみた人間で、笑うべき時に笑って、言うべき言葉を並べるだけ。自分の気持ちはどこかへ置き去りにして、なるべくこんな自分を知られないように人との距離を置いて、うまい具合にやっていたはずなのに、彼女は小さな体と小さな手で、少しずつその壁を乗り越えて、作り上げた自分を守るべき術を壊して、僕自身を見つけだして、手を差し伸べてくれた。きっと、彼女はそれに気がついてはいないんだろうけど。

「若王子先生?一緒に帰りませんか?」って笑う、その笑顔ひとつで、僕は今日もまた笑える。
「もちろん、一緒に帰りましょう」
「やった!じゃあ、早く帰りましょ?」
嬉しそうな顔を見れば見るだけ、僕はもっと彼女を喜ばせたい。どんな言葉が彼女をもっと喜ばせることが出来るのか、どんなことをしたら彼女が喜んでくれのか、そんなことを考えて一緒に他愛のない会話をして、一緒に帰る帰り道は何よりもの宝物だ。
「ねえ、若王子先生!わたし、若王子先生が笑ってくれると嬉しいです」
「そう?なんで?」
「はじめて会った時、すごく寂しそうに笑うなって思ってたから。今は心の底から笑ってくれてる気がして、だから嬉しいんです」

頬を赤らめて話す彼女が可愛らしくて、僕のことをそうやっていつも見ててくれる彼女の存在が嬉しくて、喜びで、僕の全てがきみで出来てるんだって今すぐ伝えたくなる。きみも、僕に対して同じ気持ちを持っていてくれたらいいんだけど。いつか、僕がきみに好きだと伝えたら喜んでくれる?僕のことを好きだって言って、一緒に喜びを感じて一緒に生きてくれる?もし、この願いが叶うのだとしたらこれ以上の幸せはない。




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