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すっかりあの映像の事を忘れていた。

ルフィだけじゃなくてサンジまであの意味の分からない物を背負ってるとは…。けれどこれでアレが悪魔の実の能力とは関係無い事だけははっきりと理解する。ナミやロビン、チョッパーとも話したけれど何も現れなかったし…

「でも、どっかで見た事あるんだよなぁ〜どこだったけ…?」

思い出しそうで思い出せない、このモヤモヤとした感覚が気持ち悪い。腕を組んで悩んでいればトンカントンカンと何か固い物を叩く音がして顔を上げる。
考えながら歩いていたせいでいつの間にか知らない場所、地下に降りてきてしまっていたらしい。好奇心から音が聞こえる部屋へひょこっと頭を入れて見るとフランキーとウソップが居た。

「何してるんだ?」

「お、ナナシ!前にルフィが壊した俺の発明品を直してるんだ、見ろよ!カッコイイだろ?」

ウソップの元へ近づき手元の発明品とやらを見せてもらうがそれが何の道具かさっぱり分からない。取り合えずかっこいいと言っておく。

作業台の方へ顔を向けるとフランキーが顎に手を当て、思案しながら大きな設計図にペンを走らせていた。勝手に発明品の説明を初めていたウソップの話をバレない程度に頷きながら聞き流しておく。

「そんで、ここの部品を外してだな…ん?」

ウソップの声に作業室を見渡していた顔を戻すと締めたボルトとナックが外れないらしく苦戦している。

「ちょっと俺に貸してよ」

手渡されたそれを今度は俺がやってみる。こういうのってコツを上手く使ってだな…グッと力いっぱいに捻ると硬かったボルトが外れる。やった!
ちょっと得意気な顔でウソップに返せば関心した顔をされた。

「はぁ〜…ホントに男なんだなぁ、ナナシは」

同じ年頃の男に比べれば細身ではあるけれど力まで女の子みたいに弱いわけじゃない。これでも筋肉は少しある方だし。

「そういやぁ、おめぇはなんで女の格好してるんだ?」

設計図から顔を上げたフランキーが気軽な口調で聞いてきたので俺も迷いなくはっきりと答えた。

「好きだから」

ニッと笑って見せれば「いい目してるじゃねぇか!おめぇのその変態気に入った!」と返された、変態は余計だ。

「おっと、いけねぇ!おれとした事がうっかりしてたぜ…ほら、これおめぇのだろ」

ガサゴソと何かを漁っていたフランキーが取り出したのは、

「俺の日傘!」

手元に無かったからてっきり失くした物と思っていた。でもなんでフランキーが俺の日傘なんて持ってるんだ?日傘を受け取る俺の表情に気づいたフランキーは口を開く。

「おめぇが倒れたって場所に一緒にあったらしくてな、折れてたもんだからおれがスーパーにかっこよく直して改造もしといてやったんだぜ!」

直してくれたのはありがたいが人の知らない間に改造するのは如何なものかと思ったけれど、まぁいいか。しかし別に見た目は至って普通の傘だ、どこがスーパーに?首を傾げた俺にフランキーが再び日傘を手に持つとあろうことかいきなり固い木片に叩きつけやがった。って何してんだよ!
まさか直した物を持ち主の目の前で壊すとかそんな無慈悲な事をするのは小学生までで勘弁してもらいたい。

しかし唖然としていた俺の目に入ってきたのはへし折れた日傘ではなく木片だった。えぇ?!俺の反応に満足した顔でフランキーは日傘を返してくれる。

「そいつの骨を全部超合金に変えてんだ、そして!その超合金はスーパーなおれが作ったスーパーな超合金だから重さも変わらねぇし、強度も最高だぜ!どうだ、スーパーにイカしてんだろ?」

要するに普通の日傘よりもスーパー強くなったと。これなら滅多な事で折れる事も無いしもしもの時にいい武器になるかもしれない。海賊とか能力者が普通にいるこの世界に一般人の俺がどうやって無事に生きていけるか不安があったので、これは凄く心強い。

「ありがとうフランキー」

俺の言葉に「いいって事よ!」と気前の良い笑みで応えたフランキー、男前な姿にキャー!兄貴ィ!って言いそうに…はならなっかたけど感謝感謝。本当はビームとかロケットとかいろいろ付けたかったと言われたがそこはありがたく笑って流した。そんなおっかない日傘は嫌だ。むしろ日傘の原型留めてないし。


気さくな二人の雰囲気のおかげでまるで昔からの友人の様にと話が弾み打ち解けてきた頃にふと思い出した事が一つ。

「そう言えば、食事の後からゾロ見かけないな…」

「ゾロか?ゾロなら展望室のジムで筋トレしてると思うぜ」

まじで?ウソップの言葉に俺は素直に驚いた。
少し早めの時間に食事してからもうとっくに月が空高くに顔を出している。漫画の中でもダンベルとか持ってる姿をよく目にしていた記憶があるけれど本当にずっと鍛えてるのか。

忘れようとする度思い出す
(俺を見る時の気難しそうな顔)

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