君と春の雨に | ナノ

深い溜め息を吐いた



「どうしよう…コレ」

必要な物しか無い質素な小屋の中で俺は誰にも答えて貰えない独り言を呟いたのは、現在拾ってきた“人”を見下ろして途方に暮れていたからだ。





俺の目には、あの爆発で落ちてきたのが人の様に見えてしまった。
面倒事には基本関わりたくないし気のせいかもしれないと思いたいけど、本当に人っだったとしたらとても目覚めが悪いし化けて出られたら…なんて考えまで及ぶと臆病な俺は人で無い事を祈りつつ落下地点である雑木林の中を探し回った。
そしてようやく見付けた大きな塊はやっぱり人だった。


緑の中でも良く目立つ青いな陣羽織に重たい鎧を纏った男へ恐る恐る近寄るも、もし意識が合って起き上がった瞬間にバッサリ切られたなんて笑えない。
キョロキョロと視線を動かしその辺に落ちている枝を拾うととりあえず遠巻きにしながら突いて見た。動かない。
ピクリともしない事にホッと安堵したがあの崖の高だ、普通に考えて死んでる可能性の方が遥かに上な事を思い出して顔が青ざめた。

人命救助から死体処理なんてもっと笑えない。

枝を放って慌てて近付き青い人の口元に耳を寄せ、呼吸を確認する。
生きてろ生きてろ…と心の中で念じていれば思いが通じたのか微かな息遣いに最悪な展開は免れたらしい。


ここまで来たからには助けたいけれど問題はまだ残ってた。
この青い人をどうやって家に運ぶか。
意識の無い人間は予想以上に重たいし、担ぐにしても見るからに俺よりも長身の男を運ぶのはどう考えても無理。

だからと言って諦める訳にはいかないしなぁと、ない頭をフルに動かしてからようやく一つの案を思い付いた俺は立ち上がる。

「すぐ戻って来るから待ってろよ」

返事は無いと分かりつつも意識のない男へ声をかければ、返事の代わりに男の睫が微かに震えた様な気がした。







男の手当てを終え薄い布団に寝かせ直してから俺も一息ついた時には陽は沈みすでに月が真上に昇っていた。

片手にゴザと縄を携えて青い人の所に戻っり、横たわる体をゴザに乗せては縄で縛り荷物の様に引きずりながら何とか家まで運んだ。途中何度か石とか木とかにゴツゴツぶつけてしまったけど、俺にしては上出来だったと思う。

昼の残った魚をかじり空腹を満たしながら青い人の顔を覗き込む。少しは手当の高がそうしたのか顔色も悪くないし呼吸も穏やか見える。
焦っていた時は気づかなかったけれど、予想していたよりも随分と若い男だった。
すっきりとした頬に彫りの深い鼻筋の通った顔立ちは片目を隠す眼帯があっても見劣りしていない。イケメンはどんな姿でもイケメンなんだと把握する。…ちっ。

大作業で凝り固まった体を解すようにっぐっと伸びをする。
そう言えば外傷を見た限り擦り傷や打ち身位しか無く、運が良かったのかこの男がただ頑丈だったのか死ぬ心配はしなくていいそうだ。良かった良かった。

恐らくあの時の戦に参加していた人だろうけど、なんで合戦場から離れた崖上でそれも爆発に巻き込まれたんだろう?
着てた服や鎧はなんとなくだけどいいものな気がするし、村で見かけたような武士とはまた違うのかもしれない…カンだけどね!

それに、普通の武将がそもそも刀を六本も携えているとか無いと思うしなぁ…
チラリと男の近くに目を遣れば並べ置いた刀があった。どんな物かと興味本位に手にしたが刀のズシリとした重さに腰が引けて、鞘から抜くことも無くすぐに手を離した。

気を張っていたせいか今になってどっと疲れを感じ俺も床の上にごろりと寝転がる。
変な物ならぬ、変な人を拾ってしまった事に対して、今日一番の


深い溜め息を吐いた
(あー疲れた。)



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