君と春の雨に | ナノ

さぁ、これからどうしよう



サァー…

聞き慣れない涼やかな水音によって深く沈んでいた意識がゆっくりと浮上する。
閉じた瞼を開けてまず見えたのは新緑に生い茂る山々の木々と頬をチクチクと攻撃する河川の小石だった。

寝ぼけた頭でじーっと周りを見渡す。


どこだ此処?

まだ覚醒しきれていない頭をフルに回転させて真剣に考えてみる。

例え自分の寝相がもの凄く悪く夢遊病まがいに徘徊していたとしても、ビルや電柱の乱立するあの都会からどう転がってこんな山の中に来るのだろうか


うん、ありえない


これはどう考えても
“夢”に決まってる
もう一度寝直そう。

欠伸を一つしてから俯せた身体を捻り仰向けになると再び目を閉じる。

しかし、3秒たたずに目を開くと飛び起きた。

だって寝れる訳がない。


石が頭に当たって痛いし、下半身は何故か川の中に浸かって濡れてるし、風がビュウビュウ吹いて寒い。

あまりに信じられなくて、お約束かな右の頬を抓ってみればやっぱり痛い。

五感全てで感じるこの世界は夢じゃない


現実だ。


あまりに信じられなくてあんぐりと情けない位に口を開けて呆然としてしまう

だって…どうすればいいんだよ…
俺は確かにあの都会に…


そこまで思い出そうとすれば途端にズキリとこめかみが痛み出す
指先でこめかみを押さえても頭痛は止まずに酷くなる一方で堪らず俺は呻きながら考えるのをやめた


なんなんだよホントに…

じわりと滲む額の汗を片手で拭うと浸かったままの下半身を動かして川から抜け出し、ふらつく足に力をいれながらなんとか気力で歩き出す

北はどっちだ南はどっちだ


さぁ、これからどうしよう


(まずは此処が何処か調べないとな)



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