みかん。
2011/07/06 01:40

白昼夢かと思った。
今日は睡眠不足だと自覚していたけれどそこまでひどかっただろうかと、早めに寝ようなんて対処まで考えてしまったほどに。
僕にとって晴天の霹靂といえる話だった。
だが当たり前だろう、昨晩日付が変わるまで電話で話して、もう遅いから寝なよと、おやすみと言葉を交わした妹と、僕は会うことを禁じられてしまった。
遠回しな、けれど間違いようのない表現で母は告げた。
僕らは隔てられてしまったのだ。
それは永遠に僕らが今までの関係を失うということだった。
将来この距離が縮んだとしても、昨夜までの僕らには戻れない。
好きな音楽を聴いて、好きな詩について話して、好きな本を借りる約束をした。
それら互いが親しむものの共有は、一部努力によって成り立っていた。
同じ顔の双子でさえ別の人間なのだ、性別や年齢の異なる僕らが、高い割合で趣味を同じくしたのには不定期の報告が不可欠だった。それを断てば僕らは個になる。
堅固な一枚岩は砂と崩れて、二度と元には戻らない。
母の目的はそうすることだった。
考えるまでもない、僕らはどこか普通と違うのだろうと僕ら自身わかっていた。
しかしこの場合理解と対処につながりはない。
理解できたことに適切な対応ができるなどということはないのだ。

僕の妹、その宝石のような心。
寄り添って手の中で光る様子を眺めるのが僕の幸せだった。
戻れないからこそ過去は美しい。
僕の記憶の中で美しくなってしまった妹など見たくはない。



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