dark bluuuuue
遠出をしてみようという話になったが、列車で移動するまでにおれが公共の場でどんなドジを引き起こすかシミュレーションした***が「…やっぱり私の運転で行こう」と結論を出した。

助手席に乗り込んでシートベルトを締める。
男が運転しないなんて、という沽券ももちろんあったが免許が無いから(こっちの世界の人間じゃないし)(仮にこっちの世界の人間だったとしても免許は取れない気がする)やむを得ない。

目的地は特に決めないまま***のアパートの駐車場を出発した。
「首都高乗るよ」と呟くように言われ、シュトコウとは何なのかが分からないまま小さく頷いた。

なるほど、さっきまでの景色とは違う。
高層の建物、幾重にも重なる道。
空を突き刺すような青いタワーに目を奪われていると、それを察したような***が「スカイツリーっていうんだよ」と教えてくれた。

段々、段々、群青が濃くなっていく。
針山のような明かりが高層の建物から見えてくる。
「ここに来ると、何もかもを手に入れた気分になるの」
同感だった。おれの気持ちをまた察したと言ってもいい。

瞬間、全てが他所他所しく感じた。
ただでさえ見慣れない景色も、***さえも。
なあ***、おれと出逢う前はどんな風に呼吸していたんだい。
おれを知らない***とそれを取り巻く世界が存在していたという事実が悔しい。
この群青を見た回数にどれぐらい違いがあるのだろう。

「掛け算の暗算なんて無理」という***の独り言に、ああまただと口角を上げた。

dark bluuuuue
(答えが出たからなんだというんだ)


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