不実だらけの男 H.25/11/21


(銀沖)なんと2013年銀誕。ついった友達のいあさんの銀誕漫画を無理矢理むしり取ったのでがんばってワシも書いた。てか、某バラエティ番組でボーイスカウトやってたのでいってみた。






なにせ沖田のいちばんふるい記憶は
「あの子は今日カブに行っているから」
と言う坂田の母親の言葉だった。

カブというのは後年カブスカウトのことだと解ったが、当時小学5年生と幼稚園児のいとこ同士で沖田は坂田が遊びに来るのを楽しみにしてたものだから、その時はただわけもわからず暴れて泣いた。

それから何度か坂田にビーバーに入らないかと誘われたが、その頃はもうスカウトを敵視していたので意地を張った。
小学校に入ると向こうも親について親戚の家になど来る年齢でなくなったから疎遠になって10年。

沖田が14になった歳、スカウティングに熱心な友達に誘われて、借りっぱなしだったCDとDVDを軒並み勝手に売り飛ばしてしまった弱みもあって一度だけという約束でついて行った。

この歳になってまだ活動をしている輩は珍しいのでその友達に興味が無いわけでもなかった。
普段斜に構えているくせにまさかのボーイスカウト。
「何お前そんなのやってんの」
と言うと
「てめえスカウト馬鹿にしてんじゃねえよ!」
と怒られた。

しかし当日になって高杉が「前代未聞の下痢に見舞われたので行けない」というメールを寄越して来て、じゃあやめようかと思ったがまあいいかとただただ興味本位で足を向けた。

行ってみれば初心者の体験入隊は沖田一人だけで、中学生ともなると皆すでにそれなりの経験を持っていて一級だの菊だのといった記章を胸につけているのがほとんどだった。
なるほどこの場に入ってみれば羨ましいと言えなくもなく、さっそく適当な奴から記章を取り上げようとしていると、背後から誰かに声をかけられた。

「こらこら沖田くん、他の子をいじめていないで先輩のいう事を良く聞いて正しく行動しなさい」
振り向けば、無給のボランティアなどとてもやりそうにない死んだ魚の目をした銀髪の男が立っていた。

「よしださん」

吉田というこの男は、22歳の自宅警備員で、沖田の班の指導者を務めている。
他の指導者はともかく、吉田は大学にも行っていないらしいので、いい歳をした無職の大人がこんなところで年下相手にえらそうにリーダーきどっているというところがとても駄目人間らしいなと思っていたのだが、言っていることはもっともらしい。

駄目人間の割には妙な色気があって、ぼさぼさの髪と同じ色の睫毛が、かますのような細長く美しいえんじの瞳を密度高く縁取っている。一見からまっているかのようにクロスに生えたその睫毛がいったい透明なのかしらと思うほど美しい色をしていて、それが瞼を閉じたり開いたりしている間に大きな扇のように弧を描きながら上下していた。
べっとりと塗られた瞳はそれでも閉じ込められた野獣の、隙を見て飼育員を噛み殺して逃げてやろうという爆発前の静けさを持っている。
余裕のあるキャメルのボーイスカウトシャツを着ていても解る肩のラインは、きっと芸術的な筋肉美なのだろう。それがなにかしら動作するたびに真新しい布ずれの音と共に匂い立つような色気を醸していた。
そして奔放な銀髪に借りもののように収まる禁欲的な緑のベレー帽が、この男の無駄な色気と相まってアンバランスな魅力を垂れ流していて、気だるげなその雰囲気からもスカウティングという健康的な活動とは程遠い印象を与えていた。

吉田というこの男は、最初の挨拶にしてもおよそ指導者とは思えない言動をしていた。
まず今日の日付を班員に答えさせ、
「そうです今日は11月11日です。この日は何の日か。吉田指導員の誕生日である。皆はそれぞれ俺をなにかしらもてなすように」
などと規模の小さな独裁政権を確立させていた。

その吉田が沖田の肩に手を置いて言う。
「沖田くんは火をおこせと言うとさぼるし飯を炊けと言っても何か爆発させるし案外不器用なんだよね。だからね、君にはこれを覚えてもらいます」

吉田の差し出した汚らしい小さな紙には、やはり汚い字で「スカウトのちかい」と「スカウトのおきて」の二つが書かれていた。

「明日の終了日にテストしますから。沖田くんには難しいみたいだし「ちかい」の方だけでいいから。本当に簡単だからこれ、覚えてね」
「はあ」
その場でくしゃりと握りつぶしてポケットに入れようとすると、穏やかでやはり男らしい色気のある白い手にそっと押しとどめられ、その手が紙片の皺を丁寧に伸ばしまた沖田の手に握らせた。
「僕たちは常に正しい行いを心掛けているんだ。いいね、これをいつも読んでいるんだよ」
そう言って他の班の方へ歩いて行く吉田。
沖田はことんと首を傾げてやはりその紙を丸めてポケットに入れた。



夜。
沖田は3人用の小さなテントで寝ていた。

たった一人。

何故ならば指導員の吉田がテントを張る段になって急に「沖田くんは一人でやりなさい」と言い出したのだ。
チームワークを学ぶものなんじゃねえんですかと聞くと、沖田くんは完全に向いてないからね、とりあえずテントを張れるようになりなさいと沖田の手を引いてキャンプ場の端の方まで連れて行った。

なんですか俺は初心者ですぜと言ったが許されず、俺が手伝ってあげるからなどと言って手取り足取り教えられた。
なんで俺だけこんなはしっこなんですかいという言葉は完全無視しててきぱきとほとんど吉田が一人でテントを張りきってしまう。
さいごに「冬のキャンプは本当は熟練者しかやらない。暖かくして寝なさい」と言って男臭い臭いのするマフラーを沖田に手渡した。

夕飯だけはもとの班で食べて、そうしてやっぱり一人でテントに潜り込んで寝た。
なんだボーイスカウトというのは一人をのけものにするしようもねえ組織なのか。明日の朝全員ブッとばして帰ろうと思っていると、夜中の二時を回った頃じいじいと音がしてテントの入り口が無造作に開けられた。

暗闇からむくりと入ってきたのは小さなLEDランタンを持った吉田で、その薄明りに照らされた半身はやはり牧歌的なスカウトユニフォームを纏いながら昼間の何倍も蠱惑的だった。

「やあ、起きてた?」
「いえ」

なんだか心のどこかで吉田が来るような気がしていたが、なにしに来たのかはわからない。
正体のわからないもやりとした不安と緊張でぼんやりとしているうちに吉田はごそごそと狭いテントに入り込んでまたじいじいとテントの出入り口を閉めてしまった。

よいしょと言ってランタンをテントの天井に吊るして沖田のすぐそばに座り込む。
吉田は沖田に渡したマフラーがテントの隅に無造作に放ってあるのも気にしない。
「三人用といっても狭いでしょう、テントって」
「はあ」

「覚えた?」
「え」
「昼間渡したスカウトのちかい」
「・・・」

「覚えた?」
「テストは明日じゃねえんですかい」
「もう今日が明日だからね」

言って吉田は寝袋のままもっくりと起き上がった沖田をまたことんと押し倒した。

「沖田くんはまったく色気がないねえ。皆沖田くんくらいの年ごろになったら、やれあの子がかわいいあいつと付き合いたいって言いだすのに、恋愛にまったく興味がないの?」
「ねえことはねえです」
「そうは見えないね」
「・・・」

「でも」

ランタンの光を背後に纏って、銀時が目を細め、首を薄く傾げる。
そんな仕草も滲むような色がこぼれてきた。

「でも、そんな子のほうが、じつはいやらしいんだよね」
じじじと今度は寝袋を開かれて、冷気が沖田の身体を包んだ。

何着も持っているからと隊服を借りるはずだった高杉が下痢で離脱した為に私服のパーカーで参加している沖田のスウェットを、おもむろにずるりと下げる。
「あ」
あわててスウェットを追いかけるが時すでに遅し、下着も一緒に引き下ろされて腿のあたりで止まった。
自分の象徴を、何も纏わせずさらけ出されて、一気に羞恥が襲う。

男の淫魔のような指が沖田を握り込んで、はじめての感覚に沖田は息を飲んだ。

「さあ、覚えているところまでで良いから暗唱してごらん」
「はっ・・・は、なに・・・・」
やわやわと揉みしだかれて、もっとも敏感な器官があつく震えた。

「ちかいだよ。いくら沖田くんだってちゃんとあの紙を見ていたでしょう。俺がテントを張っている間、見ていたでしょう」
「んっ、ん・・・・」
「さあ言って。ちゃんと言えたら気持ちよくしてあげるから」
「ふ、ふぁ・・あ・・離して・・」
「離すもんか。もうこうやって暖かい沖田君を握ってしまったんだもの。さあ、言わないとこのままだよ」
「あ、ああ・・か、・・神、と・・・国っ、とに・・んあっ」

沖田が混乱の中、あのメモの内容を必死にたぐりよせて言葉にすると、淫魔の手がゆっくりと沖田自身をしごきはじめた。

絶妙な握り込みでゆっくり、ゆっくりと。

「ひゃ、ひゃあ・う・・うっ・・」
「どうしたの、ひとつも言えないの」
「うんっ・・は、はっ・・、や・・」
もぞもぞと沖田の腰が動き出した。男の手の動きがじれったく、もっと激しく動かしてほしいと訴えている。

「ひとつも言えないなんて」
ぬる。

「これは、どうしたって」
ぬる、ぬる。

「イカせてあげることは、できないよね」

少し意地悪そうな笑みを湛えた男が、ほんの少しだけ握りを強くした。
「んはあっ!あ、やあっ・・。神、神とっ・・国とにまっ、まこと・・をっ・・んっ、んっ」
「そうだよ、がんばって」
「まこっ・・を、つくし・・おき、て、をっ・・んあっ・・あうっ・・まもり、ま、すっ」

あつい手が陰部を握っている。
手のひらからなにかいやらしい液体でも流れこんでいるように、生殖の種が通る沖田の大切な部分が悶えた。

「えらいね。言えたじゃない」

ごほうびだよと言って、化け物のようにうつくしい肌色の唇が笑みのかたちをつくる。
その途端に沖田を掴んだ手が、激しく往復を始めた。

「んあっ!!あっ!!!」
思わず両手で男の肩をぎゅっと掴む。
擦られる度に、太腿の内側にぞくぞくとした鳥肌が立った。

「あっ・・・あっ・・・」
大きな声を出していることに気が付いて必死に抑えるが、苦しくて息を吸うたびに悲鳴のような声が喉の奥から飛び出し続けた。

「どう、次は?次は言える?」

もう何を言われているのかもわからないが、意識とは別の不思議な受け口が吉田の言葉を理解して沖田の口を開かせた。
「ひゃ、ひゃっ・・アン、に、にばん・・は、わ、かんねっ・・」
「うそ」
「んあ、う、うそじゃ、ねっ・・」

くっくっく、と肩が揺れた。

「こんな簡単なのに覚えられないなんて、総悟はほんとうに馬鹿だなあ」
「あっ、あっ・・ああっ!!」
総悟、と呼ばれた違和感と激しく追い詰められた物理的な責めに若い沖田は早くも限界を迎える。
吉田に股間をホールドされたまま、全身を硬直させて達してしまった。
放出の間、しつこく擦られる度に尻肉の方まで鳥肌が広がる。涙目で男を見上げると、にっこりと笑ったまま、再びじれったいほどの動きで沖田の逸物を扱いていた。


吉田指導員の手の中に青臭い液体を迸らせて肩で息をしていると、足を広げられてぶちゅりと冷たいものが尻に塗りこめられた。

「やっ・・・なに」
「何でもないよ」
吉田の手が、前から後ろに回ったことに不安を覚えてそれでもされるがままに足を開いている。

ふいに、吉田が口を開いた。
「ねえ、ほんとうにわからないの」
「わかんねえでさ・・・覚えて、ねえ」
「俺のことだよ。ちかいのことじゃない」
「えっ」
「昔はあんなに俺に会いたがっていたのに」
「だ、だれ・・・・」
「良く、遊んでやったろう?」

「銀・・・にいちゃ・・・ん?」
とつぜんに、何でも真似をしていつも追いかけていた従兄弟のあちこち跳ねた銀髪を思い出した。

まだ色気もなにも無かった頃のカブスカウトの坂田の写真。
自分の写真を見せながら、こちらもまだ幼い坂田がそれよりも小さな沖田にどうだ恰好良いだろうと熱心にビーバースカウトに誘っていた。
あの写真の坂田が長じて熟成されて、こんなに妖しい男になったのか。

「な、んで・・なまえ・・」

ずぶりと、男が入ってきた。

「ィイイイッ、あっ・・」

冬の夜。
寒いはずが、沖田のこめかみに脂汗が浮いた。
みしりと菊座が広がると同時に尻から喉まで槍で串刺しにされたような痛みが走る。

「あっ・・・はあ・・・あう・・・・・・」
ぼろぼろと零れる沖田の涙を唇で掬い、坂田がちゅうと音を立てて目尻を吸った。

「沖田くんは教えてもらえなかったかもしれないけど、俺の家はあれから破産して親戚との縁を切ったんだよ」
ゆるゆると動き始める肉塊。
沖田の思考は、性器の責めと坂田の言葉で混乱を極める。

「それから俺は吉田松陽という男の養子になった。それが今の名前だよ」
「んんんうっ!うあっ」

尻の内側の肉が擦れる度に、内臓が引き出されるかと思った。

興奮した雄のものが自分の中に入っていることくらい、解る。
それを考えると、痛みがなにか別のものに変わり始めた。

「うう、ひい・・ひい・・」
ぐい、と膝が首の横に付くほどに押し込められた。

「うわあ、沖田くん身体柔らかいねえ」
そのままの体勢で吉田・・・坂田が身体を進めると、より深く結合する。
腹の中まで坂田が入ってきたような感覚に、沖田は雌のような悦びを感じて身を大きく震わせた。

「ねえ、俺の誕生日に沖田くんをくれる為に、参加してくれたんでしょう」
「はあんっ・・・あは・・・」

真っ暗なキャンプ地のはずれ。
坂田の思い通りに設営された小さなテント。
その深緑の三角が、ゆさゆさと揺れている。

塗りつぶされたような暗闇の中、不自然に揺れるテントからまるで子供が声を殺して泣いているかのような喘ぎ声が漏れていた。





翌朝。
ちゅんちゅんと鳥の鳴くキャンプ場の真ん中。
ポツナンと二人が立っていた。

テントを片付けて自分の車に乗せる坂田。
今は昨日作ったかまどにフライパンを置き、坂田自慢のフレンチトーストを作っている。


「なんで誰もいねえんですかい」

沖田がしごくまともな質問を、した。

「だって泊まったの俺と沖田くんだけだもん。ふつうこんな寒い時期にキャンプなんてしないよ。するけど体験入隊会ではやらない、てかまず泊まりがない」
「はあ」

小さなフライパンでじゅうじゅうと音を立てている卵とトースト。
軽く柄を持って流れるように調理しているその手が、昨夜自分の性器を握り込んでいたのかと思うと、沖田の身体とあたまが熱く疼いた。

「沖田くんが来たとき俺はすぐわかったよ。だから車にいつも積んでるテントでお泊りしようと思ってさー」
「たんじょうび」
「え」
「たんじょうび、おめでとうございやす」

幼いころ、あれほど背中を追いかけていた坂田に会えたのは嬉しかった。
勢い身体を捧げてしまったが、家の破産にあって余所へ養子に出されたなどと聞けば同情も生まれようというもの。
だが坂田はつるんと更にトーストを乗せて、フォークとともに沖田に差し出しながらしれっと答えた。

「ああ、あれ。誕生日っての嘘。ごめんね」
「はあ」
「俺、本当は誕生日10月10日なの」
「なんで」
「いやまあ沖田くんのはじめていただくのに何か理由がほしくて」
「最低ですね」
「ああ、黙ってるのつらいから言っちゃう!銀さん言っちゃう!ホントは養子の話も嘘なの」
「・・・」
「去年親が離婚して母親の姓になっただけ。そう言ったら沖田くんが同情してくれるかなあって思って」

呆れ果てて沖田は受け取った皿に口をつけてズルズルとフレンチトーストをフォークで口に押し込み始めた。
「コラ、お行儀わるいよ沖田くん!」


むしゃむしゃと、わりと美味い朝飯を食べながら。
寒空の下、沖田は坂田の事を

『嘘だらけの男だな』

と思っていた。



(了)



















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