きんぎんすなご H.25/07/22


(銀沖)2013沖誕。ゆっときますけどゲロのようにつまらないです。
作中に出てくる「きんとき」は、ストレートヘアじゃなくて、ホストの方です。





沖田くんがプレゼントプレゼントとものすごくうるさくなるので、できればこの時期は会いたくないのだが、たった一週間連絡をとらないでいただけで俺の息子がこれまた我慢の利かない野郎ですぐに寂しがってずくんずくんと疼き出してしまった。

沖田くんのことを一日中考えて、気が付けば沖田くんがパンツを脱いでいるところなどを想像してしまって、いかんなこれはと気晴らしにそこいらを流してみても熱くなった心臓は収まらない。
それどころか少し沖田くんに似ているショートカットの女の子などを見ると股間までもが熱くなり、今にも勃起しそうというか、もうなんなら半勃起くらいはしてしまっていた。

仕方ない玄人のお姉さんにでもお願いするかと歌舞伎町ならではのネオンのお店に入ろうとしたら、

「風俗もリッッッッッッッッッッッパな浮気ですぜえ・・・ですぜえ・・ですぜえ・・・(エコー)」

という世にも恐ろしい沖田くんの科白が思い出されて身体が固まった。

「銀さん寄ってきなよお」
呼び込みの声を背中に聞いて後ろ髪を引かれながらも、沖田君の幻影が背筋を凍らせるので足早にその場を立ち去る。けれど俺の股間は俺自身に容赦なく脅しをかけてきた。
『抜けー。イッパツ抜いとけー。抜かねえと街中の女の前で勃起してやる〜〜〜〜〜〜』

きゃっ。

品行方正とは程遠い俺なのだが、いくらなんでも勃ちっぱなしはまずい。ヒジョーにまずい。
仮にも思春期というか食べ盛りの女の子がいる家のおとうさん(役)が変態だなんてこれはいけない。

うん、これは仕方ない。
神楽の健全なる教育のためだ。

我慢してできないことはなかったのだが、我慢する必要もないので結局誕生日当日に沖田くんを安ホテルに呼んでみた。
なるべくその話題に触れないで行為に及ぼうと思っていたのに、沖田くんは開口一番、
「旦那ァ、誕プレくだせえ誕プレえ〜」
などと言ってきた。

「・・・・なに」
「なにじゃねえですぜ、アンタ恋人の誕生日になんにもなしってそりゃねえです」
「エッ!?そう?世間はそんなかんじ?俺たちの頃はそういうのやらない方が愛が深いって言われてたんだけどなあいてててててててててて」
「ふざけんじゃねえや、いつの時代も誕プレと愛は比例してやす。ねえ誕プレくだせえよ誕プレー」
「わかった、じゃあ俺をプレゼ・・・あいたったたたたたたたたた!!!ちょっと乱暴すぎでしょ沖田くん!」
「アンタなんてとっくに俺のもんでしょーが!誕プレくれえケチケチしてねえでくだせえよ!」

刀の柄で俺の鼻の穴を激しく攻撃してくる沖田くん。結構力が強いので抑えるのが大変です。
「いや知ってるでショ、銀さん万年金欠なのよ」
「それならニコニコ沖田金融がありますぜ」
「いやなにそれめちゃくちゃ怖いんですけど!何そのネーミング!ニコニコって明らか闇金だよね!?しかもなんで俺が沖田くんに金借りてまで沖田くんにプレゼントしなきゃならないの!?」
「愛のあかしじゃねえですか」

えーん。

そのあとはもう一生懸命なだめてすかしてようやっとベッドインさせてもらった。
何故恋人とエッチするのにこんなに苦労しなければならないのか全く分からないが、とりあえず欲求は満たされようとしているので上機嫌で腰を振っていたら、ぎゅうっと沖田くんが抱きついてきて、
「きんとき・・・」
と悩ましい声を出した。

はて。
ワタクシの名前は銀時ですが。

それもそんな名前なんか呼んでくれたことなんかないですし。
いっつも旦那とか色気のない呼び方ばっかして。
それでも「きんとき」などと失礼な呼び間違いはしたことなかったのに!

あー萎えるわ。
そう思って沖田くんの顔を見たら、頬を薄く染めながら額に汗を浮かべてなんだか辛そうなのかきつそうなのかよく解らないけども、それは余裕がないだけでものすごく感じてるんだって表情をしていたので、ああこれは萎えようが無いとやけくそで行為を続けた。

沖田君が名前を呼び間違えた事を意識しているのかしていないのかはわからないけれども、ただとりあえず放出欲が満たされただけで、なんならヤる前よりもやもやしてしまった。

「沖田くん、ちんこ舐めてきれいにしてよ」
「ハァ?やでさあ、なんで俺の誕生日にンなことしないといけねえんでさ」
「してよ」
「ヤだって!するなら挿れる前にしてくだせえって言ってんでしょーがいつも!ケツに入れたチンコなんて俺ぜってー舐め、んッ!」
沖田くんの脳天の髪を掴んで萎えた陰茎を手でぐいぐい唇に押し付ける。
抗議しようとした沖田くんだけど、俺の真面目な顔を見て少し怯んだ。
「ふぐっ・・・な、んだって・・んですか、ぃ」
話そうとする沖田君の唇が開くところへやわらかいままの俺を押し入れようとすると、不満そうにしながらも温かい舌で舐め始めてくれる。
なんだかはじめて沖田くんとヤッた時みたいに、急激に感じた。



きんとき、というのは歌舞伎町にいたホストで、人気があると言えばあったらしい。
女に言わせると接客にムラがあって、酷い時は指名されて隣に座っても返事もしないこともあるのだが、ノッている時はこれほど良い気分にさせてくれる男もいないという。
髪は金色の天パで、初めて夜の街で見かけた時は驚いた。
噂には聞いていたが、俺にそっくりだったのだ。
そっくりでホストやれるってことはやっぱり俺もその気になりゃあ結構稼げるはずだなと思ったわけなのだが、なんとなんとまさかの沖田くんが金時とできていた。

ホストの金時に金を貢いでいたわけではなく、どうやら本当の恋人だったらしい。
俺がそれを知ったのは金時が逃げてから。
逃げたってのは沖田くんからなのか歌舞伎町からなのかは誰にもわからない。
金時もわりと危ない橋を渡っていたようだし姿をくらませたと聞いてもそれほど不思議ではない。
ただ沖田くんに何にも言わないでこの街から消えてしまったのだ。

俺はその後に金時と沖田くんの関係を知った。
沖田くんが俺に金時を探せと依頼して来たからだ。
俺としては沖田君が男とできていて、相手がしかも俺と瓜二つの金時だとなれば心穏やかでなかった。
何にも意識していなかった沖田くんが急に気になって、気になって気になって金時を真面目に探しもしないで沖田くんを口説きにかかった。
わりとすぐに沖田くんは落ちて俺のものになったのだが、面倒臭がりの沖田くんが「同じ顔だからいいか」なんて言ってさっさと切り替えてくれたんだろうラッキー!とばかりに付き合った。

そんなわけでもうすっかり俺に心をくれたと思っていたのに、このタイミングで「きんとき」はないだろう「きんとき」は。

きゃっ。

怒りがおさまらなあい!

「なんでえ、誕プレもナシでエッチして汚ェちんこまで舐めてやったってのにどーゆーことですかぃその態度!」
俺があんまりグズるもんで、ぷんぷん怒って沖田くんが出て行ってしまった。
なんで俺がそんなこと言われなきゃならないんだ!沖田くんが「きんとき」なんて言うからでしょーが!!

ああそうでしょうとも!
最初に恋仲になったのは金時が先ですもの!そうだもの!
しかしながら沖田君を口説いて俺を金時の代わりにさせたのは俺自身だから!!!誰にも文句が言えないいいいいい。
ひーっ!!!むかつく!!!


ぐっすん。
でもでも、沖田くんだって俺でいいって決めたわけだから、俺以外の男の名前なんて呼んじゃったらそれは精神的な浮気というものになるんじゃないのかなあ?

ぶらぶらと街を歩きながら沖田くんに恨み言を呟く。それでも何かご機嫌のとれるものでもないかと駄菓子屋の店先を流し見ている自分が情けない。
あんなに誕生日プレゼントを欲しがっていたのだから、せめて駄菓子だけでもやれば喜んだのかもしれないが、だって本当に俺の財布には駄菓子を買う余裕さえない。今日のホテル代だってそのへんの事情を解っている沖田くんが払って行ってくれた・・・・わけもなく、土下座してツケにしてもらっているくらいだ。
これはほんとうにニコニコ沖田金融にお願いしなければならない。

心ここにあらずで沖田くんの好きなガムを手に取りながら、

「銀より金のほうが良いに決まってるよねえ」

ぽつんと本音が出た。

店のババアが「金あんのかい」と疑わしげな眼をするのでぽいとガムを投げて炎天下の街に戻る。
容赦なく七月の厳しい陽射しが俺の脳天を総攻撃してきて、もともとろくでもない俺の思考は迷走を始めた。

そんなに欲しいなら、あげようか、プレゼント。


あるのだ。

俺にはとっておきの、奥の手が。

ああ・・・・、暑い。
あたまがくらくらする。
この暑さのせいでやってはいけないことをやってしまいそうだ。
自棄になって、取り返しのつかないことを。


びいびいとうるさい蝉の声を聞きながら、じっとりと汗ばんだ懐から携帯を取り出した。
発信履歴の一番最初に沖田くんの名前があるのもなんだか情けない。

「なんですかぃ」
沖田くんの冷めた声。
「暑いねえ、元気ぃ」
「元気もなにもさっき朝からホテルにしけこんだじゃねえですか」
「ねえ、お金貸してよ」
「はあ?」
「ニコニコ沖田金融。良心的なんでしょ?」
「・・・言ってやせんけどそんなこと」
「ねえ特別に低金利で貸してよ」
「いいですぜ、じゃあトイチで貸しまさあ」
「それ良心的違うよね」
「いくら必要なんですかぃ」
「んー、2万くらい?」
「俺に聞いてどうすんですか」

誕生日だというのに沖田くんは昼から仕事だそうで、すでに外回りに出ていた。
金を用意するというのなら何もわざわざ沖田君に借りなくたって他にどうとでもなる。
この街には俺が無理に押し付けた恩を未だ返してくれていない輩がゴマンといるからだ。
それでも今日は沖田くんに借りたい。意地でも借りたい。

「総悟!ンな野郎にいつまでも構ってねえでさっさと戻ってこい」
心底俺の顔を見るのもいやそうに土方が大声を出すのを今日はありがたく感じる。くるりんとした沖田くんの目を見ていると決心が鈍る。

プレゼント期待しててねと言った俺の顔を変なものでも見るような目で小首をかしげていた沖田くんを置いて、俺は金券ショップにやってきた。
チケットを一枚買って、釣りでパチンコでも行こうかと振り向いた瞬間、拗ねたような赤い瞳と目が合った。

「沖田くん、誕生日プレゼントを先に見るのはルール違反じゃない?」
「旦那こそディスカウントショップで誕プレ買うってどういう了見ですかい」

はだかのまんまのディカウントチケットを沖田くんの手に握らせると、ことんと首をかしげた。
「なんですか、旅行ですかい」
「行ってきなよ」
「はあ?」
沖田くんがチケットをじっと見た。京行きの新幹線(エコノミー)の日付けは今日の夜。
「俺が一人で行くんですかい?今日俺このまま夜勤ですぜ」
「仕事サボるのなんていつものことじゃないの、行ってきなよ、京にいるんだから」
「なに、誰が」
「金時」

沖田君はキョロンとした目で俺を見ている。
おお。いつにも増してかわいい。あのつやぷるんとした唇をべろべろなめて吸い付きたい。
しかしもうできないのだ。

「君のお探しの金時が、京にいるんだよ」
「はあ」
「別件でねー、京まで足延ばした時に偶然見かけちゃったのよこの間。もちろん沖田くんの依頼受けた後だったからホントは教えてあげないといけなかったんだろうけど、もう俺達出来上がっちゃってたもんで、その必要もないかなって思ってさー」
「はあ」
「だけど沖田くん、アッチの方が良いみたいだから、パーッと誕生日に大盤振る舞いで、わあああああっ、何してんの!?」
沖田くんは俺の言葉が終わる前に、びりびりとチケットを破り捨てた。
「なにすんのなにすんのそれ13800円もすんのに!」
「こんな紙切れが誕プレたぁ、旦那も甲斐性ねえったら」
「紙じゃないもん愛だもん!旦那の愛の結晶だもん!」
俺は這いつくばって無残にも小さな紙屑になってしまったエコノミーチケットをかき集めた。

ぐ。
と脳天に圧迫感。
あ、コレ踏んだな。俺の頭沖田くんが革靴で踏んだな。

「旦那の愛なんてこれっぽっちも感じたことありやせんぜ」
ぐりぐりぐりざりざりざり。ざりざりってのはもちろん俺の鼻が道路の砂にこすりつけられる音。

両手を道路に着いて、ぐいと頭を上げた。
冷たい目で俺を見下ろす沖田くん。
「・・・沖田くんさあ、意地張るのは勝手だけど、いらないならそう言ってよ。なにも破らなくても金券ショップに返品したらお金返ってくるのにい」
「旦那がクソみてえな誕プレよこすからですぜ。大体俺にくれたモンは俺のモンなんだから俺がどうしようと俺の勝手でさあ」

俺俺俺俺うるさいなあ。

「それから俺べつに意地なんか張ってねえんで」
はあ?
「張ってんでしょ、金時の居場所がわかったってえのに行かないなんて言うんだもの」
「すっげえ今更じゃねえですか」
「うんそれはごめん。ついね、つい隠しちゃったのよ。だけど教えてあげたでしょお?だったら行きゃいいじゃん、行きゃーいいじゃん!!」
「いや全然行く必要ねえです」
「なんで?行けばいいじゃん!好きなんでしょ!」
「いや全然好きじゃねえです」
「好きじゃん好きじゃん!エッチの最中に名前呼ぶくらい好きなんじゃん!」
「いや名前なんて・・・てか往来ですぜ旦那、でかい声でなにわけのわからねえことを」
「わけわからなくなんかっ、ない!!!あんなホスト野郎が好きなんでしょ!甲斐性あるから?ねえ甲斐性あるから!?」
「好きじゃねえって言ってるでしょうが!」

びえええええっ。
叩きつけるように言った!叩きつけるような言い方した!!

「じゃあなんで付き合ってたの?なんで金時がいなくなった時俺に依頼なんかしたの?」
「そりゃ旦那の事が好きだからでさあ!」




「え」




沖田君は、声を荒げた後も一見すると無表情なのだけれど、それでもその中に「しまった」という感情が潜んでいるように思えた。

「ん・・・ゲフッ・・・・なに・・・なんて・・・げふげふっ」

びっくりしすぎてうっかり唾液がいらんところに入ってしまった俺が、這いつくばったままむせているのをつめーたく見下ろす沖田くん。
「どしたんスか、そこまでトッショリだったんですか旦那」
「え、わかんない。ナニ、沖田くんゴホッ・・金時が好きなんじゃないの?」
「・・・アッチが好きなのになんでアンタみてえな貧乏人に俺が突っ込ませるんスか意味わかんねえ」
「エフッ!んげふっ・・・いや、だから・・・金時がいなくなったから仕方なく」
「旦那に惚れてたからアッチを代わりにしてたんでしょーが」

ゴフ。

「・・・マジ・・・?」
「ふつう解りやせんか?アンタ全然金時探してねえのに俺なんにも言わなかったでしょ」
「あれ・・・。俺サボってたの知ってたの」
「知ってやした」
「え・・・でも金時の名前呼んだじゃない」
「しつこい」
「え、しつこいって何」
「なんなんですかい旦那、俺がアンタのこと嫌いな方がいいってんですか」
「違うけど・・・呼んだもん・・・」
「気持ち悪いしゃべり方しないでくだせえ」
「だって呼んだもの!これは譲れない!」
「呼んだのはアンタの名前でさあ」

ゴフゴフ。

「なに・・・?あれ・・・きんとき・・じゃなくて、ぎんとき、だったの」
「まあ「ぎ」はちょっとかすれてたかもしれやせんけど」
「ウソ!?」
両手の指先を口に当てて少女のように驚いてしまった。

てゆうか。

「旦那じゃなくて、名前呼んでくれたの」
「それはどうだか知りやせんけど」
「いや呼んだんだよね?そこ今更否定しなくてもいいよね?なにそれもっとはっきり言ってくれないとわかんない!結局銀さんが好きだったの沖田くん」
「言いましたよもう」
「もっかいゆって!もっかいゆって!」
「だから・・・なんかあの頃白髪の変なオッサンのことがすげえ気になって仕方ねえなって思ってたら、歌舞伎町で金時に声掛けられて、酒飲んでかない?って。そいであんまりにもアンタに似てて・・つか旦那をちょっと上等にした感じだったもんでそいつについてって、それから・・・まあそうなったわけなんですけど、俺としちゃあどっちかっつとくたびれた方の・・まあつまり旦那のことですけど、旦那の貧乏くせえとこが嫌いじゃねえんで、金時が新店でオープニングスタッフとして働くから京に行くって言った時、これはチャンスだなって思ったんでさあ」

沖田くんの説明は全然意味がわからなくて、でもなんとなく推測はできた。
つまり、つまり沖田くんは本当に俺のことが好きだったのだ。
俺の代わりに金時と付き合っていたけれど、金時の住み替えを機に俺に依頼を持ち込んで距離を縮めようとしたんだろう。

唖然だ。

沖田くんの頭の悪さに唖然だ。

「かお・・・おんなじなんで、俺が金時と付き合ってたって旦那が知ったら・・・どう出るか、そう思って依頼したんでさあ」
もうしゃべるのが面倒になってきたのか眠いのか、だんだん沖田くんがゆっくり口調になる。

「ねえほんと信じられないからもう一回確認していい?だからつまり・・・沖田くんは・・・俺のことが好きで、俺の名前呼んだんだよね?」
「さあ。いつですか」
「だからセックスの最中・・・」
言いかけた途端、俺の後頭部はどかんという音と共にそれはもうものすごい衝撃を受け、ふたたび地面に思いっきり突っ伏した。

「テンメー気色悪いことでけえ声でわめいてんじゃねえよ変態」
「ぷはっ・・・ごほ、ごほごほっ・・・。ひ、土方っ・・・・・・・・・・・くん」
なんとか顔を上げて振り向くとまっっっっっっっくろの男が副流煙を撒き散らしながら俺を見下ろしている。
街中ですぐ抜刀する癖があるから、このマヨラーは本当に危ない。
「なァにが土方「くん」だ。公道で猥褻発言しやがって迷惑防止条例違反と社会のクズ容疑で逮捕すんぞ」
「いや後ろのほうなにそれ、クズ容疑って何」
「社会のクズでさあ」
「沖田くんまでなに」

沖田くんがきゅっとしゃがんで、いまだ地面にへたっている俺の顔と同じ高さに真ん丸の赤い目が降りてきた。
鼻先3cmでじっと見つめあう俺達。
沖田くんの真っ白の両手が俺の頬を包んだ。
「俺、旦那の顔好きなんでさあ」
「か・・・かお・・・・・・・・・・ひたい・・・ひたいよ、おひたふん」
ぎゅうと頬の皮を左右にひっぱられる。
「ひたい・・・。ほんなにひっぱるひほ、いなひよ(そんなにひっぱるひと、いないよ)」
「おんなじ顔だったら、旦那のほうが、ずっとすきです」
「おきたくん・・・・」

「だから、そういうことは二人だけでやりやがれ!・・・ったく」
俺と沖田くんは土方に首根っこを掴まれて立ち上がらせられた。むかつくので沖田くんの破ったチケット代をこいつに請求しておこう。

行くぞと言って土方が沖田くんの頭をはたいた。やめてくれ、それ以上頭が悪くなったらどうするんだ。
ああでもなんかひょっとしたら土方がはたきすぎて今の脳みそになったのかもしれない。

沖田くんは腕をひっぱられて後ろ歩きの状態で俺に手を振った。
「旦那、俺のトイチってのは、十時間イチですからァ。それから複利計算でお願いしやすう」
ああ、前言撤回。頭良いじゃないの。複利なんて言葉知ってんじゃないの。十時間てその金利タチの悪い闇金でも最高潮に悪い方ですがな。



それから沖田くんは巡回をもう一度抜けて俺に会いに来た。
「結局誕プレもらってねえです」と言うので、「俺はやった。沖田くんが勝手に破ったんだもの」とそっけなく答えたら、「破らねえで使った方が良かったですかい」なんてたたみかけられた。
ぐっすん。
俺でいいでしょ、とぎゅうって抱きしめたら、
「今年は旦那でがまんしときまさあ。来年はもっといいものくだせえね」というので、
「もっといいものってなに」と聞いて、「きんとき」といわれてはかなわないので、それは言わないでおくことにした。




(了)
ハピバスデ沖田さんすごく遅れたのにすごくつまらなくてすみません




















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