不穏な痛み[1/2]



キジル海瀑でイル・ファンに戻りたいらしい二人と今後の進路を考えていると、最悪なことにアルフレドが何故かパーティに復活した。
最悪。
しかもイバル君の依頼がどうこうで、一緒に旅をすることになってしまった。
死にたい。

けどそんなことも言ってられないから、みんなに着いてハ・ミルに戻ってきた。
とりあえず決まったことは。
船でイル・ファンに行けない場合、サマンガン海停からカラハ・シャール方面に行く、ということ。
その前に此処、ハ・ミルでラ・シュガル軍の動向を探るとかなんとか。

…うちのジュード君はやっぱり危険すぎることに巻き込まれているらしいね。

にしても、キジル海瀑の景色はやっぱり綺麗だったなぁ。
クラナがリーゼ・マクシアを好きになるのも納得納得。
けど、この村は変わった。


「…この村おかしいような気がするよ。前に来たときよりなんだか険悪」

「あんまり歓迎されてない感じがするね…」


ハ・ミルの村人は、俺達を見るとすぐに家へと入っていく。
一度、睨みつけてきてから。
…何か恨みでも買ったのかな。

そういえば、ラ・シュガル軍はどうしたんだろう?
もう居なくなってる。
ジュード君、巻き込まれてるし心配だなぁ。

そんなことを考えながら村を歩いていると、罵声が遠くから聞こえた。
『この疫病神!』とか、複数の声。
'誰か'が'皆'に迫害されている?
一対多数?

思わず走りだそうとすると同時、ジュード君が俺の横を抜けていった。

にしても速い。
この一年くらいで飛躍的に成長してる。
流石は成長期。
俺なんて退化はしても、進化はしない歳になっちゃったし。


「はぁ…身長180欲しかったなぁ」


そんなことを思っちゃうと、何故か隣を走っているアルフレドが憎たらしくなってきた。
…とりあえずムカつくからナイフでも投げておこう。

やっぱり、案の定、今回も、軽く避けられてしまった。
いつになれば当たるのかな?




迫害されていたのは小さな女の子だった。
村人に罵声を吐かれ、石をぶつけられ。
酷すぎる…!!


「可愛いものは国の宝。それなのに…あんなのって…!!」

「理由小さいな」

「黙れよ屑」


襟首を掴んでアルフレドにナイフを突きつけていると、石のぶつかる音が変わった。
見てみればジュード君が女の子の前に立って、彼女を庇っている。
村人達は驚いたらしく、手を止めていた。


「お前達のせいでッ!こちらは散々な目じゃ!!」


いち早く俺たちの存在に気づいた村長さんが叫んだ。
豹変っぷりが凄まじい。


「…ラ・シュガル軍にやられたか」

「八つ当たりかよ?大人げないな」


お前が言うなよ、というのは心の中に留めて女の子の側に駆け寄り膝をつく。
何箇所か切ったり擦れたり腫れたり。
それに、女の子の目も赤く充血してる。
泣いた跡。


「……村長さん、これが人のすることですか…?」

「っ、よそ者に関わるとろくなことにならん!すぐに出ていけッ!!」


村長さんはそれだけ言うと、家の中へと戻っていった。
他の村人達も帰ったりと、とにかく俺達から距離を置いた。


「大丈夫?今治癒術かけるから…ジュード君も手伝って」

「うん。……それにしても村長さん、人が変わっちゃったみたい」


呟きながら、先に治癒術を詠唱した俺の隣にジュード君がしゃがんだ。
そして、まだ詠唱の終わらない俺を横目に「治癒功」と一言。
…これは何かの当て付けかな!?
そりゃ俺精霊術苦手だけどさ!!

すっかりやる気を失くし俯いていると、女の子は村の奥へと走っていってしまった。


「私達は村の者からラ・シュガル軍の動向を聞くとしよう。長くとどまるつもりはない。それを忘れるな」


どうしようか戸惑っているジュード君に、ミラさんは言った。
意外に優しい。
ジュード君はありがとう、とだけ残して女の子が向かった方へと走り出した。








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