prologue[1/1]



「ここは…どこ?リーゼ・マクシア…?知らないよ、そんなの。家、帰りたい…お母さんたちに会いたいよ!!」


少年の悲痛な嘆きは誰にも届かない。


























「おめでとう、先生」


手を叩く、乾いた音。
二人の子どもが夫婦を、特にいうならば妊婦を囲んで微笑んでいた。
ふと、少女が男性に耳打ちする。


「あれから五年。こっちで成功して良かったね、先生」

「…二人とも。そのこと、エリンには内密に…」

「わかってるよ。…俺たちも頑張らないとね、クラナ」

「うん、そうだね。お兄ちゃん」


クスクスと笑い合う二人の子どもは、そっと夫婦から離れた。
せーの、と息を合わせる。


「「俺(私)たち、5年後旅にでます!」」


幼い少年少女の突然の発表に、夫婦は目を見開いた。



「だ、駄目よ。危ないわ…」

「大丈夫だよ、エリンさん。俺はもうその頃には15歳なんだから」

「今でも魔物を倒せるんだから…ね、マティス先生?」


男性が複雑そうに顔を歪める中、二人は未だクスクスと笑っていた。


「だから、それまではここの治療院に居候させてください。ジュード君の面倒も看ます」

「いいお姉さんになるよ!お金だって、旅の間に稼いで返すから!」

「……金は別にいい。ちゃんと、生きてくれるならな」


固いが優しい口調に、二人はニコリと笑った。
エリンも仕方がないとでも言うようにふわりと微笑む。


「ありがとう!それじゃあ改めて…」


二人は再び顔を合わせると、かけ声無しに口を開いた。


「「よろしくお願いします」」





to be continued,
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