11:59

僕は怒っていた。なににって?椿と棗に。僕たち3人は三つ子であり、兄弟ではなく、不思議な関係を割と長くしていた。1丁度10年前のこの日。まだ3人で同じ布団で寝ていた時から始まったこの関係。それなのに…

「2人とも覚えてないなんて…1人で舞い上がって僕が馬鹿みたいじゃないか……」

そう。僕はこの日を楽しみにしていた。この日のために僕は椿の好きなケーキ屋でケーキを予約し、棗の好きなメーカーのワインを用意していた。僕の好きな2人の誕生日が1日違いだから。11:59に椿におめでとう、12:00に棗におめでとうをいうために。なのに…


「なんで棗なんかと一緒に紅白見なきゃいけないんだよー」

椿は僕と2人でいたいといい始めた。棗はそのことに関して何も言わない。ただ、椿を凄い顔でにらみ僕の腕を掴む。
どうして?
僕は3人でいたいのに。

「なんで仲良くできないのさ!2人なんかしらない!」




ということで、僕は絶賛家出中。コートだけ着てでてきてしまったのでポケットに入ってる小銭しか持ち合わせもなく、宛もなくフラフラと公園を徘徊する。小さい頃よく遊んだ遊具。かなりボロくなったブランコ。よくこのブランコを3人で乗ったっけ。

「梓!」
「棗……」

流石もと陸上部。走りだけは速いみたいだ。

「この寒い中、どーしたんだ?」
「だって…嫌いだもん」
「俺がか?それとも椿か?」
「2人とも。」

椿と棗の仲が悪いのは昔からだ。でも、こんな日まで喧嘩しなくてもいいと思う。だって…

「今日はお前達の誕生日で、俺の誕生日の1日前で、俺らの関係すべてが始まった日だもんな?
21年前からと、10年前から」
「え?」

心の中でも読んだかのように的確にセリフを紡ぐ棗。

「でも、俺だって梓のためにプレゼント用意してたんだぜ?まぁ、ナツメもだけど。梓が俺たちの好きなものを用意してくれたみたいにさ」

そこに息を切らした椿も続ける。
椿の手には箱が握られていた。すると棗も持っていたカバンから同じような箱をとりだす。
渡された箱を開けてみると2つともよく似た…いや、同じペンダントだった。すると、2人はびっくりしていたようだった。

「あちゃー…まさか棗と被るとは…」

2つとも、ハートが半分に割れているペンダントだった。真ん中にはそれぞれキラキラ光るピンクと緑の石。
そして、彼らの手には水色の石が埋め込まれたもう片割れのペンダント。

「これじゃあ、椿と俺がお揃いみたいだ。」
「うぇえ…棗とお揃いとか…」

そういうふたりは笑っていて。僕の気持ちも静かになっていく。冷静になった僕のがはっと気がついた。

時間!!!

時計のディスプレイには、11:59。


「椿!」
「ん?」
「Happy Birthday!」
「あ…あずさぁ…」

喜んでくれたのは嬉しいけど抱き着こうとする椿をしずめる。
そして、

「棗!」
「お?」
「Happy Birthday!」

時計のディスプレイは丁度12:00をさしていた。除夜の鐘がなる。


「2人とも大好きだよ。」


3人のハジマリの日に伝えたかったこと。

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