日常の一コマ
「いらっしゃいませー…って、またクロアか」

「またって何だよ。俺は客だぞ」


此処道具屋に入ってきたのは、常連客であるクロアだった。

噂によると、とんでもないマッドサイエンティストであのオベロン社の社員らしい。
しかも、企画開発も行っている技術部の中でも一番のエリートだとか。

人は見た目によらないと言うけど…こんな子どもがなぁ。
しかも女みたいだし。


「今日は店主いないのか?」

「親父ならちょっと出かけたよ。俺は留守番。親父になんか用だった?」

「あー…対したことじゃないし別にいい」


そう言いながら少し悲しそうにするクロア。
…なんだろう、胸がちょっとモヤモヤする。
何か大切な用でもあったのかね?

クロアは幾つかの小瓶をカウンターに置いた。


「とりあえず10個補充しとく。いくらになる?」

「えーっと…3000ガルドだな」

「分かった」


値段を聞くと、クロアはポケットを漁り始めた。

…会計が終わったら、すぐ帰るんだよな。
そんなことを思いながら紙箱に小瓶を詰める。


「……あ、あのさクロア」

「何だ?」

「もうすぐ親父帰ってくると思うし、ここでちょっと待ってたらどう?」


え、と呆気に取られたような表情を俺に見せるクロア。
しかも小銭が床に落ちる音もした。
うわぁ、珍しい。


「…いいのか?」

「うん」


あ、でも椅子は俺が座ってる分しかないよなー
どうしよう…


「えっと!椅子、持ってくるから!!」

「…やけに張り切ってるな、お前」


呆れたような視線を俺に向けるクロア。
ふ、不覚にも可愛いと思ってしまった俺って…!!


「……何百面相してるんだ?てか、椅子なんて別にいい。立って待つし」

「や、そんなわけにはいかないだろ!!」

「うるさい奴だな。…なら、こうすればいいだろ」


軽々カウンターを越えたクロアは、ニヤリと笑った。
そして、椅子に座る俺の膝に腰かける。


「は?えぇぇええ!!?」

「煩い。…うん、なかなか居心地いいな。人の体温ってのはそれなりに落ち着く」


平然と言ってのけたクロアは俺の胸に頭を預けてきた。
…小さい、軽い。

ただそれを心地よいと感じるあたり、俺は大分……うん、何かもう駄目だな。






end.


「あ、店主帰ってきたな」
「…何しとるんだ、お前ら」
「お、親父!?これは…!!」
「???……良く分からないけど、例のブツは?」







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