君と共に
「ねぇミラさん、味はどう?」

「程よい甘みだ。イウは料理が出来るのだな」


宿屋の厨房を借りて作った沢山のケーキなどが並ぶテーブル。
そして、それを頬張るミラさんの頬には白いクリームが付いていた。


「ホールの大半は宿にお裾分けして、プリンも冷えたら半分くらい渡しに行こうかな」

「全部食べてはいけないのか!?」

「駄目!ジュード君とか厨房を貸してくれた宿の女将さんとか可愛い可愛い俺のジュード君にあげるんだからね!!」


ワンホールのケーキをミラさんの魔の手から遠ざけて、睨み合う。
そしてナイフで一人分だけ切り分けて、ミラさんに渡した。


「うむ、美味い!」

「ありがとう。……あ、そうだ。このケーキは絶対に残しておいてね。一番上手く出来たから、これはジュード君専用」


ケーキを頬張りながら頷くミラさんに、俺は一息ついて部屋を出た。









一階に降りてみて見えた、愛しい後ろ姿。


「ジュード君♪」

「わっ!?い、いきなり抱きつかないでよイウ…」


俺が後ろから抱きつくと、ジュード君は呆れ混じりに怒った。
怒った顔も可愛いなぁ。

…と、それより言うことがあるんだった。


「あのね、ジュード君。新作ケーキ作ったから食べてくれない?」

「確か、おやつはもう済ませたと思うけど?」

「あ……ご、5時のおやつってことじゃ駄目?」


ジュード君を解放して、首を傾げて尋ねる。
すると、仕方ないなぁ、と苦笑するジュード君。超キュート。


「じゃあジュード君、こっち。
ミラさんはもう食べ始めてるから、早くしないと無くなっちゃう!」

「ちょっと待ってよ!」


ジュード君の腕を引いて部屋へと向かう。
階段を駆け上り、廊下を走る。
一階に居る人ごめんなさい。

そうして一分も経たずに辿り着いて部屋の扉を開けた。
…………。


「おほかっはな、ふはひほほ(遅かったな、二人とも)」


部屋に居たのは、相変わらずなミラさんと。


「よお、イウ。腕上げたな、おたく」


アルフレド。
しかも、奴が食べているのはジュード君にあげようと思っていた、最高の出来だったケーキ。


「………赦さない、赦さないからな!!」

「うおわっ!?」


テーブル上のナイフを全力で投げるけど、ギリギリで躱されてしまった。
アルフレドの米神に紅い筋が一本入っているだけ。
とにかく直ぐに距離を詰めて、アルフレドの襟首を握って持ち上げた。


「お〜ま〜え〜!!それは、俺が、可愛い子達にあげる為に作ったケーキなんだぞ!!それを…それを!!」

「い、一個ぐらいいいんじゃねぇか?」

「良くない!特に、そのケーキは…それは、今日一番最高作で!!」


本格的に首を締め始めると、俺の手首をジュード君が掴んで止めた。


「それくらいで赦してあげてよイウ。イウが作るお菓子はどんなものでも美味しいから大丈夫だよ」

「けど!!」

「それに…また、作ればいいんだよ。その時は僕も手伝うから。…ね?」


首を傾げて俺を見上げるジュード君。
可愛い…!!


「そうだね、ジュード君!今からでも作りに行こっか!!」







君と共に
(作るものなら何でも美味しいよね!)







end.









「づぐるなら…ぞの前にぐび…ばなじで、ぐれ…」

「イウ!!アルヴィンが死んじゃうからもう止めてあげて!!」

「死ねばいいよ。…けど、ジュード君のお願いだから不本意だけど、今日は止めてあげる」







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