異郷の物語
『ソーディアンとかマスターとか天地戦争とか…響き的に元いた世界を思い出しちゃうんだよね』
愚痴るようにディサピアは突然言った。
…そういえば以前、異世界人だとか自称してたな。
自室で二人になった後にディサピアから聞いた経歴はとにかく凄かったことを記憶している。
そんなことを知らないシャルティエは、ディサピアが元いた世界について疑問を口にした。
天地戦争時代からの仲だけど、さすがに戦争中にそんなことを話す間は無かったんだろう。
『僕のいた世界、ね。…いいところだったよ。人を貪欲に陥れる素晴らしい戦争もあったし。僕をマスターに選ばないのはちょっと赦せなかったけど』
それは素晴らしいと言えることではないとここに主張する。
とりあえず、戦争とマスターの響きが被ることは分かった。
「ディサピア、お前の世界でいうソーディアン的な存在は何なんだ?」
『うーん。ソーディアンとは全く違うんだよなぁ。何となくイントネーションが似てるような気がするだけでさ。それについて答えるなら、使い魔みたいなものだよ。自分で作る傀儡的なものとは違って個性的で扱いにくいんだ。良くも悪くもね』
10年間一緒に居て異世界人だと打ち明けられたりしなかったから、よほど隠していたのだろうかと思っていたけど、そうでもないらしい。
質問すれば簡単に答えやがる。
『…あー、思い出したらアレ欲しくなってきた』
思考を軽く整理していると、唐突にディサピアが呟いた。
アレって何だ?と口にすれば、クスリと笑ってディサピアは言う。
『願いが叶う優勝商品』
人を貪欲にするっていうのは、それの事を指すのだろうか。
…にしても願いが叶う、か。
「俺も参加したくなってきた、その戦争」
「願いは、自分専用の研究所といったところか」
「残念。世界平和ですー」
『ッ!?』
明らかな嘘を言ってのければリオンとシャルティエは呆れ、ディサピアは息を詰まらせた。
…何かまずいことでも言ったのだろうか?
『…まったく、クロアは心臓に悪いね。僕のライバルと同じようなこと言っちゃって』
「『ディサピアにライバル!?』」
思わず驚いて叫ぶと、シャルティエと言葉が重なってしまった。
リオンも叫ぶことはしなかったが目をいつもより開かせている。
驚いてはいるようだ。
『…みんな、反応酷くない?僕だってそれなりにライバルはいるよ。銃刀法がどうのこうので銃器を武器にする人が少ないから唯一競える相手だったんだよ』
「へぇ、そうなのか」
ディサピアは相変わらず楽しそうにクスクス笑いながら惨いことをさらりと口から零す。
『彼にはなかなか痛手を喰らわされたからね。いつか仕返しとして眼球でも抉りだしてやろうかなって考えてるんだ〜』
『それはあまりにも酷くないですか!?』
『彼は僕を殺そうとしたんだからそれくらいやっても大丈夫♪』
殺すという言葉に少し反応してしまったが、戦争というのなら仕方ないことだろう。
だけど、願いが世界平和の癖に戦争に参加する奴なんているんだな。
それに、願いを叶えるものに頼って作った平和な世界など意味があるのだろうか?
いつかディサピアのライバルとやらに会えたらそう言ってやることはないけど、そういう思考を持つ奴のデータは欲しいので観察したい。
異郷の物語
『外道麻婆って呼ばれてる面白い料理を愉悦部と一緒にいろんな人に食べさせるのが楽しくて愉しくてね。特に、先生とライバルの反応が好きだったなぁ』
「そ、そうか…」
→あとがき
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