息をする度、かすかに揺れるまつげに見とれていた。昇りきった太陽の瑞々しい光を浴びた寝顔は天使のようだと思う。れっきとした女の私より女らしくて、でも星野は男で。
 中性的な彼の魅力が今まさにその実力をすこぶる発揮している。はーーうらやましい。

「もう朝だよー」

 ただ息で空気を揺らすだけのような小さな声で、横たわる彼に告げる。そのボリュームに起こす気なんてさらさら無くて、もうすこし、もうすこしと、この寝顔を独り占めしていたい気持ちを強くさせた。だって、起きたら彼の頭の中はあの子のことでいっぱいになるのだから。(もしかしたら寝ている時だって。)

 時計をみる、午前9時32分。近くのショッピングモールの開店は午前10時で、もう彼を起こさなければならない。わかってる。わかってる。
「星野、起きて、一番乗りできないよ」
 さっきよりは少し、大きめに出てくれた声が震える。「一番乗りしてプレゼント買うんでしょ」昨日寝る前に言ったじゃない。だからせめて、起きた時は私の顔を一番に見て私のこと考えてくれたら、嬉しい、なんて、小さな独占欲。「目当てのモノ無くなっちゃうかもよ」だからせめて、このチャンスにそのぬくもりに触れてみたい、なんて、ただのエゴ。
 「起きて」起きないで。
 「星野」起きないで。
 「置いてっちゃうよ」起きないでいて、置いてかないで、よ。ねぇ、


 私の気持ちを、置いてかないでよ。









 最初で最後と、触れた熱にからだが戦慄いた。
 うっすりと開いた目が徐々に丸くなって、なんて顔してんだ、って優しい声が響くまでは、唯一無二、誰にも邪魔させない、私とあなただけの時間だった。






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どうしたって臆病。
161127


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