甘くもなんともなく、電波。みじかい。
「ねぇ、梵天」
この世界はそんなに救いのないものなの。
開きかけた口を閉じた私は彼の、金に近い黄緑色の髪をひと房、掬った。
はらはらと散るそれは花びらのようで、雪のようで、水のようで。
いずれにしろ私の指をいとも簡単にすり抜けていく存在であることは確かだから、小さく、笑ってしまった。
だってやっぱりどうしたってあなたは、私のことを必要としないんだろう。
自分に背を向けて横たわる姿がどうにも愛おしかった。
起きている時でさえあなたの、澄んだ空よりもあおく悠々たる海よりもふかい双眼は、いつも私を見てはいないことも、知ってはいるけれど。
それでもこの胸にいだく想いは消えやしなくて、そっと。
その細い、白い肩に縋るようにこうべを垂れた。
ほんとは寝てないんでしょう。気づいている。
そして気づいていながら恥ずかしげもなくこんなことをする私を見てもなお、あなたは、こちらを振りむかないんだ。
ひどいひと。
でも、やさしいひと。
「ねぇ、梵天」
あなたのその、非情に異常なやさしさがあるからいつだって私は、私には。
この世界ですら輝いて見えるんだよ。
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nanjyakorya.
150329
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