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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.11 一節を終わらす木枯らし(1/4)
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冬の足音

春を超えて夏も越えて、秋めいた節に冬を感じさせる冷たい北風。
サンフラワーのアパートから見える大きな大きな一本の木。
赤や黄色に色づいた紅葉がひらひらと落ちていく。

「窓から見えるあの木のね。あの葉が落ちた頃、オレはもう・・・。」

それを自室から遠い目で見ていたユーヤ。

「ユーヤ!?いきなり何を言い出すんですか!?」

体調管理が厳しい昼と夜の気温差で、ついに風邪を引いてしまった彼。
朝から訪れていたユーキとヒナに見舞られながら、ゲホゲホゼェゼェと辛いはずなのに、病弱ヒロインごっこを見事にやりきる。

「もう寒いのやーだーっ!夏が恋しいよ〜。げほごほ。」

「それ前は逆のこと言ってませんでした?」

「38度か。熱高い割には元気そうだね」

体調は良くないけれど、とりあえず元気なので心配はご無用。



風邪を引いた日

「う゛〜・・・っ。」

布団の中で怠そうに茹だっているユーヤ。
そんな彼を心配に思うユーキだったが、今日は普通に平日。
今日も学校に行かないといけないので、これにて退室。

「気を付けて行ってらっしゃい。ユーキまで風邪引かないようにね。」

「はいっ!ではでは行ってきまーす!」

もちろんそれはヒナも一緒。
けどユーキを見送った後、またユーヤの部屋に戻ってくる。

「・・・あれ?ヒナは学校、行かなくていいの?」

「うん。ユーヤ一人にしておく方が心配だから、僕も今日は休むことにしたから大丈夫。後のことはやっておくから、ユーヤはゆっくり休んでて。」

風邪引いたユーヤのことが彼なりに心配だったようで、大学をサボ・・・。休んでまで看病を続行した。



ヒナの看病

熱さまし用の冷却シートをユーヤの額に。
飲む点滴として有名なスポーツドリンクの清涼飲料水を、いつでも飲めるように枕元付近に。

「相変わらず洗濯物溜めてるね・・・。部屋も前来たときより散らかってるし。」

「たまたまだって。たまたま。」

「本当?」

「本当だって。本当。」

「とりあえず全部洗っておくけど、いいよね?」

「・・・うん。」

それからウトウトと眠ったユーヤ。
ヒナも一通りユーヤがサボった分の家事を終えても、この部屋に自身の課題レポートを持ってきたりして、このまま静かに過ごす。

「あんがとね、ヒナ。」

「どう致しまして。ゆっくり休んで早く良くなってね。」



ヒナの看病 2

そしてお昼を迎えた頃。

「ん・・・。」

ユーヤは、ふと眠りから目を覚ます。
辺りを見渡すとヒナが近くにいた形跡があるものの、本人の姿が見当たらない。

(・・・・・・・・・。)

寝ている間に自分の部屋にでも戻ったのだろうか。
風邪の効果もあり、この心を細くさせた気持ちがユーヤをほんのり落ち込まさせる。
でも、それは一瞬。

「あ。よかった、起きててくれてて。」

「!」

しばらくもしないうちにヒナの姿が再び戻ってきた。
どうやら自分の部屋でお粥を作っていたようで、器と一緒に持ってやって来る。



ヒナの看病 3

「調子どう?食欲ありそうなら少しでもいいからお腹に入れて。」

「うん・・・、いただきます。」

ヒナの手作りお粥。
作った本人が白がゆ苦手のため、鰹だしで優しく味付けされた玉子粥。
それを大人しく口に運ぶ。

「初めて食べる味のお粥だけど、美味しいよ。これ。」

「本当?よかった。」

もう一口。もう一口。
箸ではなくレンゲを、ゆっくりゆっくりと進める。

「ヒナってお粥作れたんだ?」

「作れるようになったって言った方が正しいかも。ユーヤとユーキに今まで作ってた成果かな。料理のレパートリーも少しずつだけど増えた気がするんだ。」

「いつもオレたちに作ってくれてたもんね。ちょっと前までレトルトばっかだったのに。」



食後

「ごちそうさま。」

「全部食べたんだ。偉い、偉い。器預かるね。」

沢山の時間を使って、お粥を綺麗にお平らげ。
使った食器類をヒナに手渡し、食後用の風邪薬を飲んで、ふぃーっと満足げに一息。
そしてもう一度、体温計で熱を測る。

「37度6分か。朝よりだいぶ下がったね。よかった。」

午前中あれだけぐっすり寝たおかげかな。
まだ熱はあるけれど、この調子なら明日までには調子も良くなってそう。
ユーヤ自身も下がった自分の熱にホッと安心する息を吐いた。

「ユーヤ。ちょっといい?」

はずだったのに。



ヒナからユーヤへ

「え・・・?」

ユーヤの額にヒナの額が。
その距離はとてもとても近くて、いきなりのことにユーヤは驚く声を上げた。

「!!」

触れていたのはほんの数秒。
額からの熱も確認していたヒナは、ゆっくり静かにそこから離れていく。

「んー、やっぱりまだ熱いね。汗っぽいし、また寝ちゃう前に一回着替えた方がいいね。」

でもその数秒で心が動いた気持ちは、自分の考えよりも愚かで素直で正直・・・、だった。

「・・・・・・。」



ユーヤから

「ユーヤ。タオルと着替えこっちでよかった?」

そう言ってヒナは確認を取りながら、タオルと着替え用の服を衣装ケースから取り出す。
でも何を話しても何を訊いても、ユーヤは無言のまま。

「・・・・・・・・・。」

素直で正直だった自分の気持ちと、改めて向き合ってしまった彼。
何度も何度も止めたくて悩みに悩んで、この望みは悪いことなのに、心のどこかが期待する『だった』にならない想い。

「はい。着替えとタオル持ってきたよ。」

ずっとずっとそれを耐えていたユーヤは、

「ユーヤ?どうした、の?」

絶える選択肢を自ら選んだ。
着替えやタオルを受け取らず、代わりにその手を取って引き寄せて。



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