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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.4「本当は分かってるんだよね」(1/6)
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今日は朝から天気が悪い。
予報によると夕方に明けて雨が降りやすくなるとのこと。
だから今ほとんどの人が傘を持ってきており、いつ雨が降っても大丈夫なように準備を備えていた。





昼休み。
今日も俺は人目のつかない場所に、神崎先生を呼び寄せて、脅し一つでその腕に抱いてもらう。
そんないつも通りの調子に戻っていた。

「・・・んっ。」

言葉一つで従わせ。
交す口づけを深くさせる。
どうしてだろう。
あの日から神崎先生は、なんだか様子が変わっていた。
『本当はまんざらでもないんじゃないの?』と、本気で思わされるぐらい、態度が一片していたのだ。

「・・・。」

人というのは欲張りな生き物であるように、俺もまた欲張りな生き物で。
こんなのじゃない。
こんなのじゃなくて、より自分にとっていいものを手に入れたくなってしまう・・・。
だからだろう。
こうして神崎先生と過ごす時間が、あっという間に早く過ぎ去ってしまい。
この時間が、この心をとても重たく揺るがせる。

「あ・・・。」

昼休み終了まであと5分。
予鈴のチャイムが校舎中に鳴り響く。
もう教室に戻らなければならない。

「浬くん、そろそろ戻らないと。・・・午後の授業、遅刻してしまいますよ。」

「・・・・・・。」

「浬くん?」

「ー・・分かってますって。それに『優等生の錦くん』が遅刻するわけないですから。」

そう言葉を口にすると共に、抱かれた神崎先生の腕から離れた俺。
容姿端麗。
頭脳明晰。
運動神経抜群。
揃いに揃った三拍子を持つ心優しい性格の優等生・錦 浬へと。
神崎先生の目の前で、その仮面を被る。
それは瞬きよりも早く、あっという間に俺の態度も声色も豹変した。

「それでは神崎先生。俺、先に教室に戻ってますので、また午後の授業で。」

「え、えぇ・・・。」

この時間を惜しまず過ごした俺は、ニッコリとした笑顔で神崎先生の元から去っていく。
そんな俺を見て、また戸惑った顔色を見せた神崎先生は、教室に戻って行く俺の姿を静かに見送ったのだった。






「浬くん、いたいたー。」

「・・・。」

それから授業が始まってしまう前に教室へ戻ると。
なんと同じクラスの男子生徒、及川が俺の席で俺を待ち構えていた。

「もー!昼休みどこ行ってたのさ。ずぅっと浬くんのこと待ってたのにー!」

「ご、ごめん・・・。」

どうやらまた頼んでもないのに、俺を待っていたようで。
約束すらしてないというのに、待ちぼうけしていた不満をブーブーぶつけてくる及川。

「あーあ。せっかく浬くんに、とっておきな話をしたかったのにな〜。」

「ごめんって。」

(どうせくだらない話のくせに。)

ジトした横目で睨む彼を、なんとか宥める俺。

「じゃあ親しみに愛情をこめて『ハルくん(はぁと)』て呼んでくれたら許してあげる。」

「えと、次の授業そろそろ始まるよ?及川くん。」

(誰が呼ぶか。)

「キィーッ!普通にスルーした!されたぁ〜!!」

けれど及川はそれほど怒ってなかったようだ。
すぐに機嫌は戻り、ケロッとした顔で話したかった話を口にする。

「でね。話というのはー・・。」

でもやっぱりたいした話題ではなく、どうでもいい話ばかり。
俺は右から左へと。
完全に聞き流しの状態で、彼の相手をさせられる羽目に。

「・・・はぁ。」

この間から及川は俺のことを名前で呼ぶようになった。
名字でいいと何度言っても直さないから、もう好きなように呼ばせている状態。
どうやら、いつのまにか俺は及川に懐かれてしまっていたようだ・・・。
だから栗毛野郎の呆れ加減に時々、素の自分が出てしまう。

「浬くん、ちゃんと聞いてる?」

「え、あ、あぁ。聞いてるよ。」

「でね、でね、それでね。」

次の授業は数学。
神崎先生の授業だ。
神崎先生はいつも時間ピッタシにやってくる。
さっきまであんなことを俺をしていても、いつも通りにこの教室に訪れる。
くだらない栗毛の話を耳に通しながら、俺は早く本鈴が鳴ってくれることを祈った。



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