「赤司君ってさー」 向かい合って将棋を打っていると唐突に彼女が口を開いた。目を合わせることも無く次の駒を置く。 「完璧主義だよね」 「そうか?」 うん、と頷いて僕の目を見る。 「それか究極の負けず嫌い」 確かに、と彼女の言っていることも頷ける。負けてはいけない、勝ち続けなければいけない。そんな僕を他人はそう見るのだろう。 「でもそれってさー」 息が詰まるんじゃない? そんな。 「…そんなことはないさ。僕にとって勝つことは息をすることと同じだからね」 「そう」 息が詰まる。呼吸ができない。だから、だから自分を護るとこも保つこともできなくなったんだろう? 重くのしかかるプレッシャーに耐えきれなくなったから僕が。 「いつか将棋で赤司君を負かしてやるんだから」 「できるものならね」 君と話している時は、呼吸が楽になる、なんて。 |