手を伸ばしても、届かない。 名前を呼んでも、返事はない。 教室に君の姿は、ない。 隣を見ても、君はいない。 僕の隣には、いない。誰も。 だけど目を閉じると鮮明に彼女が見える。笑って、泣いて、怒って、表情がくるくる変わる忙しい人でした。 目を閉じた時だけ彼女に会える。僕の記憶。僕の思い出。 けれど思い出は所詮思い出。次第に忘れていくもの。 あんなに鮮明に覚えていたのに、今では、もう。 いやだ、忘れたくないのに。今ではもう、擦りガラスを通したように曖昧な輪郭しか思い出せない。 …あれ、あの人は、どんな顔で笑って、いたっけ? 思い出せない、よ。 カオスの一言に尽きます。 |