レモンスカッシュ | ナノ

部活に行こうとお菓子を食べながら廊下を歩いていると、本を持った花音ちんと会った。図書室に返しに行くらしく、その際に歩きながら食べるのはお行儀が悪いと怒られた。お菓子という賄賂を渡し見逃してもらう。じゃあね、と別れて体育館に向かって歩いていると、視界の片隅に映った窓越しの藤に足を止めた。藤の前には先生が二人立っている。じっと動かないところを見ると、俺と同じで藤に見入っているのだろう。
俺も最初は、花なんか見て何が楽しいんだ。甘くもなければ美味しくもない。まして、食べれるわけでもない。俺にとってはあってもなくても、どうでもいい存在だった。だが、以前花音ちんが藤の花が好きだと俺に話してくれた。淡い紫色の花が綺麗だとうっとり目を細め言っていた事を思い出して、花が咲くのをひっそりと俺も待っていた。好きか嫌いかを聞かれると好き、なんだと思う。だからこうして今見入っているのだろう。
自分でも思っていたより長く立ち止まっていたようで、遅刻して赤ちんに怒られるのも嫌だから急いで体育館に向かうと、その途中、また花音ちんとすれ違った。
さっきと違っていたのは本は返したようで手ぶら。そんな事よりももっと重要なのが、目にいっぱい涙を溜めて。俺は反射的に花音ちんを捕まえた。

「花音ちん!? 何で泣いてんの!」
「…なっ、いてなんかっ! ない!」

廊下の真ん中で声を張り上げ俺の腕を振りほどこうと暴れる花音ちん。声と肩を震わせ息を乱した彼女を見ると、恐らく図書室から走ってきたのだろう。とすると図書室で何かあったのか。彼女の目線に合わせ屈み、両肩を掴み深呼吸を促すと次第に落ち着きを取り戻した。それと同時に目から涙が溢れてきた。

「ちょ、花音ちん、泣かないでよ。泣かれたら、俺、困るんだけど。んーと、あ、まいう棒あげるから」
「……」

まいう棒を差し出しても無反応でなんで泣いているのかも分からない。どうしたらいいのさ。困り果てていると花音ちんがおもむろに口を開いた。

「ねえ、この学校にさ黄瀬君以外に金髪の人っているかな……?」
「は? え、いないんじゃないだって金髪でしょ」
「うん。そう、だよね。黄瀬君位だよね」
「……図書室でなんかあったの?」

なんでもないよ、と泣き笑いを見せる花音ちん。そんなことしても逆効果って言うか。うーん。図書室で黄瀬ちんと会ったのかな。だったらなんで泣いてんの。図書室で、黄瀬ちんとなんかあったのは明白だ。黄瀬ちんがこの子を泣かせたのか。これは、場合によっては許せないかも。

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