レモンスカッシュ | ナノ

黄瀬君と付き合い始めて早数日、別にこれといって彼氏彼女のようなことはしていない。会えば挨拶を交わすことができるようになった位。クラスが違うためか話す時間もあまりなく、なにより黄瀬君が女子達に囲まれているので行きにくい。黄瀬君がこっちに来ることも最初は期待したがあっさりと裏切られた。
付き合っているのだから嫌われては、いないと思う。好かれているかは不明だが。だから今日は思い切ってバスケ部が終わるのを待ってみた。黄瀬君のクラスに行き、友達の席を借りて携帯をいじりながら時間を潰す。その携帯からぶら下がる、真新しい黄色い犬のストラップ。黄瀬君と同じ黄色だったためか衝動買いしてしまい、今に至る。買ったことは後悔していない、むしろ気に入って大切にしている。
何時間か待っているとほど待っているとガララ、教室のドアが開けられ、待ちわびた黄色が入ってきた。私の姿を見るなり目を丸くする黄瀬君。

「あれ…藤枝さん。なにして……あ、もしかして待っててくれたんスか?」
「うん」

嬉しいっス! と笑う彼を見ていると、ふと、黄瀬君はモデルをやっているのだから作り笑いをするのは得意なんだろうなと考えてしまった。そんな考えを振り払うためふるふると首を振り席を立つ。

「じゃあ帰ろっか」
「うん!」

並んでみるとやっぱり黄瀬君は背が高くて格好いいなと思ってしまう。歩いているとお互いの手がぶつかり、謝ってから手を引っ込めようとすると黄瀬君がわたしと手を繋いでくれた。反対の手でずっと携帯をいじっていて、会話はほとんどなかったが、こうして一緒に帰れるだけで浮かれてしまうわたしは、単純なんだろう。
グラウンドでは藤が淡い紫色の花を咲かせていた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -