レモンスカッシュ | ナノ

彼氏彼女になったんだから、連絡を取りたいと思うのは普通でしょ?
休み時間、黄瀬君のいる教室に向かい、目当ての彼を探す。教室内を見回すと簡単に見つかった。彼は教室でも人気があり、女子達が黄瀬君の机を取り囲むように集まり楽しそうに談笑している。少しだけ、少しだけ胸の奥の方がチクリと痛んだがこんなことを一々気にしていては黄瀬君に鬱陶しがられてしまうかもしれない。暫く入り口付近で立ち尽くしていたが話しかけるのは諦め自分のクラスへと戻った。
席に着くと、隣の席でお菓子を食べていた紫原君に声をかけた。

「ねぇ紫原君。黄瀬君のアドレスって知ってる?」
「知ってるけど、なんで?」
「教えて? お願い!」

手のひらを顔の前で合わせ頼み込むと、お菓子を食べる手を止め黄瀬君の連絡先を送ってくれた。ありがとうとお礼を言って携帯を操作していると紫原君が口を開いた。

「ねー花音ちんって本当に黄瀬ちんと付き合ってんの?」

突然のストレートな質問に思わず噎せる。「何で知ってるの?」と聞いてみるとなんとなく、と誤魔化された。

「花音ちんはいいの?」
「ん? なにが?」
「……んーん。何でもない」

もう一度紫原君にお礼を言って、本文を打ち込み黄瀬君に送信した。送信してから「あ、」と気が付いた。嬉しくてつい忘れていたが黄瀬君は女子達と談笑していたではないか。
でもきっと、わたしを優先してくれるよね。そんな期待を抱いて彼からの返信を待ったが、ついにメールは一通も送られてこなかった。
――きっと気が付かなかっただけだよね。そう自分に言い聞かせた。

***

放課後、紫原君はバスケをする服装に着替えていて、わたしも帰る支度をしていた。

「黄瀬ちんから返信来たー?」
「ううん、来なかった。きっと、気付かなかったんだよ」
「…そうだといいんだけどね」

ボソリと呟かれた言葉は聞き取ることができず、聞き返してもなんでもない、とまた誤魔化された。
スクールバッグを肩に掛けて紫原君と別れ廊下に出ると、丁度黄瀬君と会った。彼も既にジャージに着替えていてこれから部活だという事がうかがえた。わたしを素通りして行ってしまうと思っていたが彼は足を止めわたしの顔を見て謝ってきた。

「藤枝さん、丁度良かったっス。メール気が付かなくてごめんね! 返信しようと思ったんだけど気付いたのついさっきで」
「うん、気にしないで」
「じゃあねっ」
「うん」

黄瀬君に手を振り別れる。あ、また。「部活頑張って」って言いそびれちゃった。

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