レモンスカッシュ | ナノ

「うん、いいよ。付き合おっか」
「……え?」

自分の予想とは全く違った返答に思わず首をガバッと上げた。黄瀬君の顔が赤いのは夕日のせいだろうか。オレンジ色が眩しい教室、駄目で元々、当たって砕ける覚悟で黄瀬涼太に告白をした。そして、冒頭のセリフ。返事はイエス。今までに無い位歓喜した。歓喜して、高揚した。

「これからよろしくね、藤枝花音さん。じゃあ俺部活行ってくるから」
「え、……ああ、うん」

頑張ってね。言おうとしたが、彼は私の言葉を待たず教室を出ていった。そうだよね、部活があるもんね。忙しいんだよね。タイミング間違えたかな、お昼休みとかにすればよかったかな。
……もう少し、お話ししたかったなぁ。
部活が終わるのを待ってようかとも考えたが今日は早々に家に帰ることにした。喜びを噛みしめて。明日からの幸福に想像を膨らませて。
窓の外を見やると、グラウンド隅の方で夕日に染まる藤が花を咲かせようと、蕾を膨らませていた。

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