「黄瀬ちん、いい事教えてあげる。 ある女の子がね浮気ばっかりする男と別れたらしいよ。付き合ってからは放置だし、やってもいない罪を着せられ責め立てられて。間接的とはいえソイツのせいで嫌がらせにもあってた。いっつも一人で泣いててさ、可哀想だから俺が慰めてあげたんだ。これでやっと俺に振り向いてくれたし。お菓子もあげた。浮気ばっかしてた奴悪いんだよね。 ――別にいいでしょ? もう、黄瀬ちんのじゃないんだし」 黄瀬涼太を見下ろしながら一息に言ってやると口が開きっぱなしだった。モデルのくせに。俺を呼び止める声がするが聞こえないふりして、待たせている花音ちんのところに行く。 昨日の放課後、花音ちんを抱きしめた後、俺は遂に彼女に告白をした。 「ずっと、ずっと前から花音ちんの事好きだった。本当に。信じて。えと、見てらんないの、花音ちんが泣いてるとこ。だから、俺にしてよ。絶対泣かせないし、学校でも傍にいてあげる。メールもする。待っててくれるんだったら一緒に帰る。手だって繋ぐから、」 「……うん、ありがとう。嬉しいよそんな風に想ってくれてたなんて。でも、今は、」 「いいよ平気、そのうちすぐに俺の事好きにさせる」 「じゃあ、甘えてもいい?」 「大歓迎だし」 二年越しの片思いがようやく実った。長かったよ。これで、花音ちんは俺のもの。これで俺の事だけを見てくれる。大団円だね。最高のハッピーエンドじゃないか。 因みに、二年越しというのは一年の時にも隣の席になったのがきっかけで。話してみたらいい子で。彼女が黄瀬ちんを好いているというのも知っていた。知らないわけがなかった。 部活を終え、教室で待っている彼女のもとへ急いで向い、並んで帰る。途中、藤の花が目に留まった。残念そうに眉尻を下げる彼女に「そのうち咲くんじゃないの?」と言って慰めた。 俺の言った通り、切り口からは新しい花が下がっていた。まだ数は少ないが、そのうちまた前のように淡い紫色に染まるだろう。 とか言って、この花切ったの俺なんだけどね。花音のストラップ落としたのも俺なんだけどね。もっというと黄瀬ちんの別の相手に花音ちんと付き合ってるってばらしたのも俺。花音ちんに黄瀬ちんが心配してるって嘘も吐いた。知らない間にアドレス変更された時だって言ったのに。 「どうして急にアド変したんだろうね?」 って。そんなことをいっぱいしているうちに黄瀬ちんは勝手に花音ちんの事を嫌いになって、勝手に別れて。本当、全部思い通りだ。歪んでる? 人より少しだけ不器用なだけさ。 |