レモンスカッシュ | ナノ

翌日、本当に花音ちんは学校に来た。そんなに黄瀬ちんに会いたかったのか。俺じゃなくて、黄瀬ちんに。一週間ぶりとあってか、好奇の目で見られているが気にしている様子はない。いつも通り授業を受けて部活に行く時間。花音ちんは黄瀬ちんを呼び止めた。
俺もその場にいたので、見つからないように廊下の角を利用して隠れる。

「き、黄瀬君! あ、あの…」
「ああ、藤枝さん。なに? やっと学校来たんスか?」
「う、うん。黄瀬君がね、心配してるって聞いて……」
「はぁ? 俺がアンタを? 心配するわけないだろ。つか学校にも来てたんでしょ? そのときに大好きな藤の花でも切ったんスか?」
「……え?」
「だぁーから! そうやってとぼけんの止めてくんないっスか! 休んでる最中、学校の周りにいるアンタを見たって奴いっぱいいるんスよ。それにあの犬のストラップだってアンタのなんでしょ」

そんな奴だとは思わなかったっス。
一方的に、花音ちんの話なんか聞かずに責め立てる黄瀬ちん。本当は今すぐにでも花音ちんのもとに行きたいけれど、今行っては全てが無意味になってしまうから悲しいけれど我慢する。そうこうしているうちに遂に黄瀬ちんが言った。

「もう別れねえスか?」
「え、や、やだ、よ。そんなの」
「俺も嫌なんスよ。だからもうおしまい! 全部最初からなかった! 今から俺らは赤の他人! これでいいっしょ」

初めてみた。黄瀬ちんが女の子を捨てるところ。反論の余地もなく一方的だった。言うだけ言って部活に向かった黄瀬ちんが完全に見えなくなったころで、呆然と立ち尽くす彼女のもとへ出る。

「……花音ちん」
「紫原君。……あはは、見られちゃった? わたし、休んでる間に黄瀬君に随分嫌われてたんだねえ。もう、笑うしかないや…」
「花音ちん」
「もしかしてさ、藤を切ったっていうの皆わたしがやったと思ってるのかな?」

泣きたいのを俺がいるから必死に堪える姿を見てたまらず抱きしめた。当然、彼女は俺の腕の中で困惑している。あまりにきつく抱きしめたせいかか細い声で「くるしい」と聞こえたので解放した。

「花音ちんごめん。俺もう見てらんない。こっちまで辛くなるの」

だから、さ。俺と――。

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