レモンスカッシュ | ナノ

ここ一週間程、彼女、藤枝さんの姿を見ていない。いつもなら部活前に絶対声をかけてきていたのに。それがぱたりと止んだ。それどころか、学校さえも休んでいるという。俺に群がる女子に聞くとずっと休んでいるという。体調不良か、怪我でもしたのか知らないが。何故休みなのかを聞いても言葉を濁してそそくさと去って行く。紫原っちに聞いても「知らなーい」と流された。
メールとか、するのが嫌でこっそり変えたアドレスだが、こうもずっと休まれては気になってしょうがない。ポケットから取り出して無難に、ずっと休んでるようだけど何かあったんスか? なんて文面で送信。数秒と待たず着信音が鳴り響いた。多少なりとも驚き届いたメールを確認すると送信エラーの表示。

「え、……あ、れ? は?」

なんでだ。エラー? アドレス変えたのか? 俺に何も言わずに? あの子が? いやいや、ちょっと待った、彼女、俺のアドレス知らねーじゃん。じゃあ変更したアドレス知ってるワケないな。……え? 俺は藤枝さんのアドレス知ってんのに何で変えた? あの子は俺が好きで好きでしょうがない様な子だぞ。なら俺からの連絡を拒んだってこと? そんなことするワケ、
…ないなんて、言い切れるのか? 藤枝さんからメールが来た時俺は返信もせず、勝手にアドレスを変更したではないか。今までだって名前で呼んだこともなかったではないか。まともに相手をした覚えだってない。一度だけ一緒に帰ったこともあるが俺は画面越しの別の女の子とのメールに夢中だった。
ドタドタと窓の外が騒がしい。うるさいと外に目をやると、いつもはそこにあるはずの藤の木がなくなっていた。いや、正しくは花。沢山垂れ下がっていた花が全て消えている。教師たちの足の隙間からチラリと覗いた、落とされた花。そう言えば、あの子も好きとか言ってたような気がする。もっとちゃんと聞いてあげればよかった。
人の少なくなった放課後、藤を見に行くとすぐ近くに犬のストラップが落ちていることに気が付いた。屈んで紐の部分を摘み上げる。落し物か? なんでこんなところに?
――そんなの、決まっているだろう。この藤を荒らした奴が落としたんだろう。まあ、そんな奴、俺には関係ないけど。

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