レモンスカッシュ | ナノ

自分で言うのもなんだが、俺はもてる。相当に。整った顔に、現役モデルという事もあってか学校でもキャーキャーと騒がれ鬱陶しいったらない。バスケ部に入った途端、さらにうるさく騒ぎ立てる女子たちが増えた。
一年の頃、同じクラスだった彼女、藤枝花音が俺に好意を持っているのは最初から知っていた。授業中とか休み時間とか、熱っぽい視線を感じて振り向いてみるといつも彼女と目が合った。ニコッと笑ってやると顔を赤く染めパッと目を逸らす。隠すの下手すぎっしょ。
それからいつまで経っても彼女は俺にアピールしてこない。いつも見つめているだけで近づこうとも話しかけようともしないで。ああもう! じれったいっスね! まあどうせ藤枝さんもモデルの俺が欲しいその他大勢と一緒なんだろう。それならまだ静かでいいか。
光陰矢のごとしとはよく言ったもので、彼女と何の進展がないまま二年に進級してクラスも離れた。そこでも俺は良くモテる。クラスが離れてからは藤枝さんの事なんか忘れて告白の絶えない毎日を過ごしていた。
そんな退屈な日々を過ごしているとある男子生徒の話が耳に入り、悪いなんてこれっぽっちも思わずに盗み聞いた。なんでも女子にフラれたのだと。これまでの人生で女子にフラれたことのない俺からしたら、彼はひどく残念な存在に思えた。フラれるとは一体どのような心境なのか、興味がわいて聞き耳を立てる。

「好きな人いるからごめんなさいってさ」
「好きな人って?」
「どうせアイツだろ。あーあ、これじゃ勝ち目ねーな」

どうせアイツ、というのは恐らく、というより絶対、俺だろう。その男子たちはフラれた奴を雑に慰めながら俺への当てつけか、精一杯の強がりか「黄瀬のどこがいいんだよ」と話している。せめて本人のいないところでやってほしかった。俺だって傷付くんスよ。
その数日後、俺は藤枝花音に告白されるわけだが。顔を真っ赤にして、声を震わせながら思いを伝えてくる彼女が不覚にも少し可愛い、なんて思ってしまって。

「うん、いいよ。付き合おっか」

軽い気持ちでそう答えた。クラスが変わってから告白されることが多くなっていて面倒だと思っていた時だったというのもあるだろう。彼女もモデルと付き合いたいというだけだったら相手をせずに捨てればいい。そうじゃなかったら女除けにもなるし。それで万事解決。
連絡先を教えて、メールを返さなかっただけでどうしてなんでと問い詰められたことがあったから、藤枝さんにメアドを知られた時はさっさと変更した。変更したことを教えなかった。それでも彼女は文句の一つも言ってこない。これは当たりくじを引いたかも。
でも一度だけ他の女子とあまりくっつかないでと言われた。藤枝さんを全く相手にしていなかったけど、この反応はつまり俺の事が。
まだ、もう少し遊んでも大丈夫。度を過ぎたところを見られると面倒だが彼女は基本口出ししてこないしそれに、彼女が俺を嫌いになるなんて、絶対に、ありえないのだから。

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