お昼休みになり、ピピピッと携帯が鳴った。開いてみると山崎さんからメール。 [沖田隊長にラケットハエ叩きにされた…(泣)] 山崎さん…、ドンマイ。なんか相変わらずな総悟にクスリと笑う。 「なんだ琥珀ちゃん、彼氏からメール?」 「なっ、店長!? 違いますよ!」 残念ながらわたしに彼氏なんてものはいない。ホントにぼっちだ。年齢=彼氏いない歴…なんでだろ、前が霞んできた。 すいやせーん。 外から呼ぶ声、お客さんだ。はーいと返事をして出ていくとアイツだった。沖田総悟、隊服姿でサボりか。 「いらっしゃい、山崎さんのラケットハエ叩きにしたんだってね」 「何で知ってんですかィ?」 「メール来たんだ」 わたしがそう言うと総悟は何故が驚いた顔をした。ポケットに手を突っ込みメモ用紙とペンを取り出し何かを書いている。 その時、わたしの携帯が鳴った。見てみると知らない番号からの電話。出るのをためらっていると総悟は誰からだ、と携帯を睨み低い声で言った。知らないよ、怖いんだけど。 放置しても鳴りやまない携帯に仕方なく電話に出ることにした。 「…もしもし?」 電話の向こうでやあっと出た! と嬉しそうな声。どちら様ですかと聞けば ≪俺だよ、声でわかんねぇ?≫ …オレオレ詐欺ですか? 待って、声、ね…聞いたとこあるような気もする。けだるそうな、やる気なさそうな声。 「…! 銀さん?」 ≪せーかい!≫ あれ、なんで銀さんわたしの番号知ってるの? 本当に個人情報流出してるのか? やばくね? ≪ジミーとさァ琥珀が番号交換してるの見ちゃって、なぁ?≫ あぁ、山崎さん経由か。私の個人情報は守られた! 電話の相手が銀さんと分かったからなのか総悟の機嫌が悪くなった、ような。 おもむろにわたしに近づき携帯をスッと取り上げ真上に投げる。そして、流れるような動作で抜刀し携帯を真っ二つに斬った。 「いぎゃあああぁぁぁ! な、何すんの!?」 「ムカついたから」 「ふざけんな!」 女子とは思えぬ声で叫んだが今はそんな事を気にしていられない。人の携帯ぶっ壊しといて飄々としている。携帯なんて百円二百円で買える物じゃないんだ、ましてバイトをしているとはいえ月五万も持っていかれているんだ。 昔、一度だけ家賃を安くしてくれないかとお妙ちゃんに相談してみたことがある。その結果、手に持っていた林檎を握り潰し近藤さんに向ける笑顔を見せられたものだから死ぬかと思った。 マジいつかシメる沖田総悟。行動に移すかどうかは別だか。 「べ、弁償してよ!」 「いいですぜ、その代り俺の番号とメアド登録しとけ」 弁償という事は一緒に携帯を買いに行くという事になり、嫌々ながら日取りを決めた。総悟が非番の日。五日後。 店長に訳を話して休みにしてもらった。 「スマートフォンってさ、略したらスマホ? スマフォ? どっちかな」 「琥珀って意外とアホ?」 「は!?」 帰り際に先ほどのメモを渡された。そこには総悟のアドレスと番号。エスケープしたい。だって登録したらパシリとかされそうじゃん! |