上手くいかなかった原因は、と聞かれたら、第一に浮かぶのがわたしの容姿だと思う。 地味で暗くて教室の隅でいつも読書でもしているような、絵に描いたように華がない。いてもいなくてもあまり変わらない位の小さな存在。比べて彼の周りにいる女の子は香水独特の甘い匂いに、爪の先から髪まで手入れが行き届き全部綺麗。化粧なんかしなくても元から整った顔は可愛げがあって、みんなキラキラしていて眩しかった。 わたしにはそんな綺麗なものなんてなかったから、振り向いてもらえるように、可愛らしく綺麗になれるように努力した。シャンプーを違うものにしたりお菓子を控えたり、前髪を切りそろえてみたり。周囲から見れば何てこともない変化だろう。それでも努力を積み重ね、それこそどこかの校長先生が言うような「努力することが大切」なんだと自分に言い聞かせ、この淡い恋が実るために必死になっていた。そんなこともあってか、わたしの存在はやっと認められ「なんか、綺麗になったね」と友人から褒められることがあり嬉しくなって、ずっとずっと想い続けてきた、誰よりも眩しかった彼に想いを告げた。 フラれるのは覚悟の上。それでも、どうしても期待して、考えてしまうもしかしたらの話。叶いもしないIFのお話。 「……黄瀬君、が、好きです」 ただ、一言。それには倍の言葉が返ってきた。 「はぁ? 冗談でしょ? …いや、ごめん、本当、勘弁してくんないっスか」 意味分んないっス。と付け加えて眩しかった、輝いて見えた彼はわたしの横を通り過ぎて行った。 あれあれあれ? こんなはずじゃ。と思うと同時に、やっぱりね、と諦めているわたしの心。努力していた、つもりだった。でも足りなかった。全く足りなかった。わたしが思っている以上に努力は実らなかった。どこかの校長に言ってやりたい。努力しても結果が伴わなければ無意味なのだと。 彼の周りにいる子たちはもとから可愛かった。だから努力すればもっと綺麗になる。わたしはお世辞にも可愛いとは言い難い容姿で、いっぱい頑張ってようやくマシになる程度。これじゃあ足元にも及ばないね。結局、思い上がっていただけなのだ。友人に綺麗になった、なんて言われて。努力が報われたと勘違いして。 こうなって当然、最初から分かり切っていたことではないか。いまさら何に傷付くというのだ。……分かっていたことじゃないか。それを勝手に期待して勝手に傷付いて。勝手に泣いて。みっともないなあ。 綺羅星の腐敗 ――――― 黄瀬君にフラれるお話。ふいに書きたくなりました。 |