青林檎の微熱 | ナノ

黒子の突然の誘いに動揺を隠せない千夜。あぁ、とかうぁえ、と曖昧な返事をすると何を考えているのか全く読めない瞳が少しだけしゅん…と落ち込んだように見えてしまって「ううん、行こっか」と言わざるを得なかった。二人で並んで歩いていると黒子の気遣いが伝わってきた。車道側を歩き歩幅を合わせている。あと、彼女に近付き過ぎず遠過ぎずという絶妙の距離感で歩いている。おかげで緊張はしたが挙動不審にはならなかった。マジバまでの道が長く感じる。途中降旗と遭遇し、妹に間違えられたり千夜のメンタルは抉られた。
ようやく辿り着いた目的地で食事をする。黒子はバニラシェイクとハンバーガー。千夜はウーロン茶とチーズバーガー。向かい合わせに座り食べる。「蓮見さんは、」黒子がふいに口を開いた。顔を上げると「男が苦手なんですか?」と直球に聞く。
ズズ、と吸っていたウーロン茶をトレーに置き、ばつが悪そうに黒子を見る。

「なんて言うか、わたし、チキンなんだよね。『苦手』なんじゃなくて『嫌われたくない』って言うのかな、それで変に緊張しちゃって。どんな風に見られているかって凄く気になって。自意識過剰なんだけどね」

黒子が初めて見る千夜の笑顔は自嘲めいたものだった。
ああ、と気付いた時には遅かった。またか。黒子になんて話をしているんだ。こんな事を男に言ったのは初めてだ。引かれただろうか。弱音ばかり、自分の言動に後悔する。
気まずくなった空気を変えるように黒子がまた「あの、」と声をかけた。

「午後からって何か予定とか、あります?」
「え? んー…雑貨とか、服とか見て回ろうかなとは思ってる、けど」
「僕もご一緒していいですか?」

突然彼は何を言い出すんだと千夜は黒子の発言を理解できず眉をひそめる。

(え、は? ご一緒? 何言ってんの? この人)

「…あの、」
「っえ、ああ、えっと、いいけど、多分、て言うか絶対つまんないよ。女物だし、雑貨とか…」
「構いませんよ」

構わないの? と思うも了承してしまった自分が恨めしい。はっきり断れれば良かったものを、これでは完全に墓穴を掘った。だが千夜は考えた。これは男嫌いを治すチャンスではないかと。そう考えれば自然と体は動くもので。この機を逃してたまるかと珍しく積極的になり会計を済ませ黒子と町へ出る。まずは、婦人服から。
いつもなら友達と行く店に男と行くのは気が引けるも千夜は、もう、とても頑張っている。普段通りハンガーに掛かっている服たちをかき分け気に入るものを探し、見つけたら合わせてみて、そんな千夜の後ろを黒子は黙ってついて行く。時々きょろきょろと辺りを見回しているがやはり暇そう。
うーんと悩んでいると黒子がいない。さっきまでいたはずなのに。どこに行った。彼を探して店内を歩き回っていると千夜さんと呼ばれそちらを見ると黒子が一着持ってきた。
白のふんわりとしたレーススカート。丈は膝上。これなんてどうでしょう、と勧めてくる。たまたま近くにいた店員にも勧められ押しに弱い千夜はそのスカートを買った。たまには、いいかなと言い聞かせて。
黒子はいやに「きっと似合います」を強調して言っていた。

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