青林檎の微熱 | ナノ

朝、日直のため早くに家を出た。職員室に行き日誌を受け取り大量に渡された配布物を抱えるように持ち教室に向かう。途中踊り場で黒子を見かけた。頬が紅潮し、汗をかいているところを見ると朝練でも終えてきたのだろう。こっそり横切りやり過ごそうとしたが簡単に見つかり水色の瞳が千夜を見据える。

「蓮見さん。おはうございます。早いんですね」
「えと、日直だから…」

本当ならば「おはよう、黒子君も早いんだね。朝練?」みたいにフレンドリーなトークと決め込みたいが、無理だ。必要最低限の会話を済ませ、足早に立ち去ろうとすると待ってください、と呼び止められた。怖がりながらも足を止める。
火神ほどではないがあからさまに怖がられているようで、

「な、なに」
「プリント、持ちますよ」
「え」

いや、いいよ。
断る間もなくプリント類を奪い取るように持っていかれ荷物は半分以下になった。おかげで軽くはなったのだが。教室に着くまで会話もなく気まずい。黒子はもともと自分から喋る方でもないし、千夜も相手が黒子とあってなおのこと静かだ。これが女子だったら会話が弾むのだろう。教室に着けば朝の早い数人はもう見えていた。ドアを開ければ自然と視線を集めるもので、火神もその一人。昨日のこともあり千夜はますます火神を怖がるようになった。

「ありがとう、く、黒子、君」

ドキドキしながら昨日覚えたばかりの彼の名を口にする。黒子は少しだけ頬を緩めた。

「いえ、どういたしまして」

少しだけ千夜に近づけた気がした黒子だった。千夜はというと、黒子の印象が怖くなさそうな人から親切? な人へと昇格していた。

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