青林檎の微熱 | ナノ

ベッドに飛び込み昨日の出来事を思い返す。我ながら凄いことをやらかしたものだ。今になって恥ずかしさが込み上げてくる。友達に黒子と買い物をしたなんて言ったら「ついに男嫌い克服か!?」なんてからかわれるだろう。
彼に選んでもらった、普段なら買わないようなスカートを穿いて鏡の前に立ってみる。自分では似合っているのか分からないが、黒子は似合うと言ってくれた。

(明日からは、黒子君に会ってもテンパらない気がする)

この出来事により千夜は黒子を怖がらなくなった、はず。なんだかドキドキした。そこに意味なんてないのに。心臓があまりにうるさく全く眠れない。明日は寝不足だ完全に。
朝、欠伸を抑え学校に登校。上履きに履き替える。肩にスクール鞄をかけ直しているといつの間にか黒子が背後に立っていた。

「おはようございます」
「っわぁあ! お、おは…よっ!?」

驚きながらも挨拶を返すため彼の方を向くと隣に火神も立っていた。さらに驚く。火神は少なからずショックを受けた。いつもならダッシュで逃げる千夜だが今日は、なんだか、いつもと違った。サッと。黒子の背に隠れる。そして極々小さな声で「おはよう」と。初めてのことで面食らう火神。自分の背に隠れるなど頼ってくれた千夜に胸が高鳴る。だが、隣の巨人は、今は来ないでほしかった。彼女といれる時間はただでさえ短いというのに。何してくれてんだ。そんな黒子の気持ちなどつゆ知らず火神は高い位置から物申す。

「…お前も相変わらずだな」

火神の一言にうぅ、と両手で顔を覆い隠す。黒子が千夜を庇うかのように一歩前へ出た。

「君の眼は節穴ですか、今挨拶されたばかりでしょう。蓮見さんはこんなにも頑張ったというのに」
「隠れてるけどな。後ろに」
「てゆーか、」
「あ?」
「火神君が来なければ蓮見さんと教室に行けたのに」

ボソリ、呟いた黒子の言葉は尻すぼみで火神にも千夜にも聞き取れなかった。別れる理由もなく三人は並んで教室までの階段を上り始めた。

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