青林檎の微熱 | ナノ

日曜日、誠凛高校バスケ部は黒子と千夜の話で持ち切りとなっていた。原因は降旗。昨日黒子と千夜が隣同士で歩いているところに遭遇したことを部活中に話してしまったからだ。部員全員が興味を示して降旗の話を食い入るように聞く。
妹かと思ったらクラスメイトだと言うから驚いたと、自分と会った時の千夜の慌てようは凄まじかったと、とても小柄な女の子だったと。降旗は笑いながら話してはいるが二年生たちは黒子に嫉妬の念を燃やした。羨ましいだの死ねばいいだの。

「僕はただ火神君と違って怖くないという事を知ってほしいだけです」

不意に背後からする声に振り向けば眉間に皺をよせボールを持った黒子が立っていた。おお…! と感嘆と驚愕の声を上げるバスケ部一同。これはついに黒子にも春が来たという事か畜生。ていうか何時からいたんだ。
黒子は聞いてもいないのに嬉々として千夜について語りだす。

「蓮見さんは小動物みたいで、見ていて飽きないんです。特に火神君を怖がっているところを見るのは面白いですよ」

火神をチラリと見てプスゥ…と吹き出す黒子。教室では火神と千夜を後ろから高みの見物ができる。本当に見ていて飽きない。自分と違って表情がくるくる、よく変わる。赤面したり、照れ臭そうに笑ったり、火神が怖くて涙目になったり。火神が話しかけるたびにびくと跳ね上がる肩。もう本当、なんなんだこの小動物は。加護欲を掻き立ててならない。
黒子と降旗の証言でリコはますます千夜に会ってみたくなった。ついに、実力行使に出る。

「黒子君、火神君、明日その蓮見さん連れてきてよ」

次の瞬間、黒子は目を輝かせた。
任せて下さい。
その声色はいつにもまして力強く、試合中のように頼もしかった。

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