立ち上がり空を游ぐ | ナノ

本心を打ち明けるというのは存外勇気がいる上に恥ずかしさを伴う。穴があったら入りたい。いっそ埋めてくれ。
決まりが悪そうに顔を赤らめ俯いた。ビー玉みたいな瞳に涙を浮かべて。相当恥ずかしかったようだ。壁に寄り掛かりズルズルとへたり込む。
打ち明けたからには、ここにいる理由はない。もとより治るまでの契約だ。それにこれ以上はアオイの財布が悲鳴を上げる。自前の服は捨てられたから服は借りたまま、忘れ物はないかと部屋をぐるりと見てみたが荷物は最初からなかった。剣はあの時折られているし、本当に身1つ。
自分の足で立ち上がり玄関扉を開く。朝の涼し気な空気が爽やかな、穏やかな1日の始まり。明るい日を背にアオイは振り返り「お世話になりました」と深々頭を下げる。

「ふん…まあ、またお前が行き倒れていたら拾ってやらんこともない」
「ふふ、じゃあソニックさんの居そうなところで倒れてるから」

拾ってね、と嬉しそうに、楽しそうに、寂しそうに笑った。
猫は家を出て歩き出す。途中何度も足を止め振り返りながら。名残惜しそうに、猫は歩いて行った。



数日後、ソニックはアオイを拾った裏路地に入った。特に理由はない。足が自然とそちらに向かっていた。何をしているんだ自分は、と思う反面、また会えるのではないかと淡い期待を抱いて。
いるわけがないと思っていた。会えるわけがないと思っていた。
彼女はそこにまた倒れていた。近付いてみると足首をがしりと掴まれる。

「お腹…空いた……」

彼女は行き倒れていた。

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