立ち上がり空を游ぐ | ナノ

ソニックの家に居候して2週間以上が経過した。
アオイが起床する時間、大抵ソニックは外出している。早い時間に家を出て遅くに帰ってくる。何をしているのだろうと気にはなるものの、聞いたところで教えてくれるわけがないと自己解決して今日も1人で過ごす。
朝、目が覚めると朝食が用意されている。冷めてしまっているが電子レンジは低い位置に置いてくれたおかげでチンして食べることができる。
昼、朝食一緒に置かれていない場合、ほとんど、100%の確率でソニックは家に戻ってきて食事を作り、また出て行く。なんと律儀なことか。
夜、夕食は共に食べることが多い。アオイは台所に立つ彼の後姿を眺めながら「お腹空いた」と野次を飛ばす。食事を終えると彼女はよっぽどのことが無い限りさっさと眠ってしまう。その際、熱にうなされることもしばしばあった。そんな日常。
だけど、ソニックは見てしまった。アオイが立ち上がり部屋の掃除をしているのを。
何故立ち上がることができる。毒のせいで体がいうことを聞かないんじゃなかったのか。だからゴロゴロと転がるようにして移動していたんじゃなかったのか。

「アオイ、もう傷は癒えたんだろう。毒も完全に抜けたはずだが」

そこにいるはずのない男の声にアオイはぎょっと驚いて立ちすくんだ。ソニックが帰ってくるには早すぎる時間だったのだ。油断していた。生活サイクルが分かっていたとしてもいつもそうだとは限らない。

「…お、お早い…お帰りで……」
「どういうことか、説明してもらおうか」
「ヒエッ」

デジャヴ。
アオイの顔のすぐ横をソニックが投げたクナイが通る。だぁん、と壁に突き刺さった。可哀想なほど表情が強張っている。嘘を吐いたら命中させるという脅しに体を固くした。

「いつから、治っていた?」
「4日、ほど、前、からです」
「何故黙っていた?」
「……」
「答えろ」

だって滑稽じゃないか。立ち上がることもままならないというから、正式に依頼を受け世話を焼いたというのに、お前のために途中でも帰ってきたのに、騙して、いたのか。懐かれたなんて勘違いをして。馬鹿みたいだ。

「……だって、答えたら、ソニックさん、怒る。絶対怒る。呆れる」
「言わなければ今すぐ追い出す」

壁に刺さったクナイを抜いて彼女の首筋にあてがう。短く息を呑むと渋々理由を話し出した。

「怪我治ったら帰らなくちゃいけないから。それなら毒が抜けてないことにしたらまだここにいれるかなって」
「は?」
「だから! 仮病ですよ仮病! ソニックさんといるの楽しいから治ってないことにして、ずっと居候してたいなーなんて。まぁ、そんなの無理なんですけど」

予想外すぎる答えにソニックは笑いを堪えることができなかった。

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